日本マイクロソフトは、モノのインターネット(Internet of Things:IoT )へのビジョンに関する戦略説明会を開催した。マイクロソフト ディベロップメントの代表取締役兼日本マイクロソフト 業務執行役員 最高技術責任者の加治佐俊一氏は、「既存のIT資産を利用して構築するのが、マイクロソフトが考えるIoT戦略。あなたの資産を意味するYourを加えて、“Internet of Your Things”と呼称している。
既存資産をつなぐのが当たり前になった段階で、IoTと呼ぶことがあるかもしれない」と説明。パートナー企業が開発したものを含め、既存システムと連携したIoT事例を紹介し、現段階で構築できるIoTを強調した。
マイクロソフト ディベロップメント 代表取締役 兼 日本マイクロソフト 業務執行役員 最高技術責任者 加治佐俊一氏
マイクロソフトではIoT分野の同社の強みとして(1)IoTを最速で実現、(2)必要なデバイス、ソフトウェア、サービスを提供、(3)豊富なパートナーとソリューション提供者のエコシステムを下支え の3つを挙げている。
「Internet of Thingsは多くのデバイス、データが対象となり、定義についても多くの意見が乱立している。どこから、どうやって始めればいいのか、どんな技術が必要なのかなど分かりにくい点も多い。そこでMicrosoftでは、既にあるIT資産を利用し、小さなことから始めて、ループを作っていくことからIoTを考えるべきだと考える」(加治佐氏)
既存のデバイスを使い、サービスやクラウドを最大限に活用し、既存のデータと統合していくことで、新しいビジネス価値を創出する洞察を生成というサイクルからスタート。その後、新規のデバイス、サービス、アイデアが生まれた際に、追加、拡張する。
また、マイクロソフトではIoT環境の課題として、安全性を担保した上で、接続、構成、活用、管理、拡張という環境が重要だとする。その環境を統合する基盤「Microsoft Azure Intelligent Systems Service」をマイクロソフトが、拡張部分についてはパートナー企業が構築するモデルを提供する準備を進めている。サービスインまでの期間の短縮、拡張性と信頼性あるプラットフォームの提供、柔軟性と拡張性ある俊敏性が向上する製品やサービスを提供する。
Microsoft Azure Intelligent Systems Service
「現在は限定的に評価をもらっている段階で、その後、公式に公開することを計画している。サービス公開の具体的な時期は、現段階では未定」(加治佐氏)
MicrosoftアーキテクチャをベースとしたIoTの事例として、ロンドン地下鉄を紹介。ロンドン地下鉄は歴史が長いが、古いシステムを拡張してセンサを配置。Windows 8のストアアプリの管理ソフトを開発し、ビデオを含め、現地を監視している。エスカレーターのモーター音に異常がある場合に、センサが感知し、保守要員の派遣を自動的に要請する。
Windows ストアアプリとして開発されたロンドン地下鉄の管理システム
この他にも、パートナー企業が各産業別向けサービスを開始しており、コンピテンシーパートナー198社が既に存在している。
会見ではこのうち、流通/小売業向けにSBクリエイティブ、医療/福祉向けのコムツァイト、製造業向けのオムロンの3社の製品やサービスが紹介された。
SBクリエイティブは、4.3インチの小型パネルを搭載したインテリジェントブックシェルフを披露した。Windowsベースで開発され、クラウドでデータを管理する。液晶画面は商品の紹介以外に、来店者のスマートフォン、タブレットと通信し、個別メッセージを送ることもできる。紀伊國屋書店でテストすることが決定している。テスト段階では書店用だが、書店以外にもさまざまな流通業での利用を検討している。