Amazon Web Services(AWS)に対する、またクラウドIaaSの提供をめぐって同社がGoogleや「Microsoft Azure」との間で繰り広げている価格競争の影響に対する不安は、少し過剰かもしれない。AWSはクラウドサービス市場の成熟期を進んでいるが、命がけの戦いをしているわけではない。
先頃行われたAmazonの業績発表の大筋はこうだ。北米での第2四半期の「その他」部門の売上高(大半はAWSだ)は、前年同期比で38%の増加しか示していない。前四半期比では、AWSの売上高は減少している。その他部門の売上高は、期待に遠く及ばなかった。
「その他」部門の売上高推移
なぜだろうか。AWSは価格を引き下げているが、今回はAWSが底辺への競争を駆り立てたわけではない。Googleが駆り立てたのだ。Microsoft Azureもそうだった。IBMの「Softlayer」も、一役買った可能性がある。ハイパースケール向けIaaSプロバイダを、航空業界に例えてみよう。航空業界の各プレーヤーは価格を下げて航空券を売り、飛行機を満席にするだろう。結局、追加サービスで稼ぐことになる。
もちろん、このハイパースケールインフラストラクチャをめぐる競争は、顧客の奪い合いが進んでいる場合には、高い利益は挙げられない。Amazonにとって幸運なのは、同社はスタート当初から利益を上げることが後回しにされている状況で、金融市場がおおむね協力してくれたことだ。
その他に、「AWSは激しい競争の中にいる」という話でつじつまが合わなかったのは、ハイブリッドクラウドについてだ。Gigaomで言及されているように、Dropboxのような会社や多くの企業は、パブリッククラウドだけに依存しようというつもりはない。パブリッククラウドだけを使う企業の割合が低いことを考えても、ハイブリットクラウドがAmazonに痛手を与えていると考えるのはやや無理がある。一方、NetAppのような会社は自社のインフラをAWSに接続している。Equinixなどのコロケーションプロバイダーも、AWSに接続している。こうした動きは、AWSの市場を拡大する一方だが、クラウド市場の成熟には、NetAppが2014年末までにMicrosoft Azureとの接続も増やすということも必然的に含まれている。
そういう意味では、確かに価格競争はAWSに痛手を与えているが、そのダイナミクスはもう少し複雑だ。
Amazonの最高財務責任者(CFO)のTom Szkutak氏は、次のように述べている。
われわれは第2四半期から、顧客のためにかなり大幅な値下げを実行した。値下げ幅はサービスに応じて、28%から51%だ。しかしAWSは極めて堅調に成長し続けている。第2四半期に、利用の増加は前年同期比で90%近くになった。チームは素晴らしい仕事をしている。そして90日前に述べたとおり、われわれが行った大幅な値下げによって、顧客は今後数カ月でかなりの費用を節約することになるだろう。それでもやはり、われわれはこのビジネスを愛している。