オンライン旅行会社TripADealは、バイロンベイに住む10人以上のスタッフを完全にモバイル化しており、バリなどの遠隔地にもサテライトチームを置いている。モバイル化された従業員を持つことで、同社は都市部にオフィスを維持する財務リスクから逃れることができた。モバイルのスマートフォンや「iPad」、そして「Salesforce Desk」アプリを従業員に持たせることで、年中無休のバーチャルサポートと販売センターを運営することが可能になった。スタッフはどこにいても、営業時間外でも問い合わせに答えることが可能になり、売り上げは劇的に上昇した。
「当社ではスタッフに素晴らしいワークライフバランスを提供しており、彼らはみな美しいバイロンベイでの生活を十分に満喫している」と創業者のNorm Black氏は言う。
「彼らは日中にサーフィンに行き、海から上がった瞬間から、スマートフォンで顧客やクライアントとつながることができる。あるいは、午後の間ずっとSalesforce Deskで最高水準の顧客サービスを提供しながら、美しい熱帯の風景の中、タコノキの木陰で仕事をすることもできる。当社では柔軟なワークスタイルを提供しているため、従業員は幸福で、健康で、活力に満ち、やる気もあり、ビジネスの成長にも貢献してくれる。これはモバイル技術に負うところが大きい」(Black氏)
非営利組織であるPlanet Arkは、スタッフを物理的なオフィスから解き放ち、スタッフがどこからでも仮想的に情報にアクセスし共有できるモバイルソリューションを導入することで、スタッフの関与と在職率を改善した。
これまで挙げたのは、小規模企業がモバイルを使って身の丈以上の成果を出し、顧客と従業員の両方の体験を向上させた例の一部に過ぎない。
では、モバイル戦略を実現する上で考慮すべき点は何だろうか。とりあえず飛び込もうとしてしまいがちだが、会社がどれほど小さくても、モバイルに移行する際は十分に計画を立てるべきだ。スタッフが1人から20人までの小さな会社のモバイル戦略は、エンタープライズ規模のモバイル戦略に比べれば、必ずしも複雑でもないし、ややこしくもないが、モバイル導入手順の一部として、最低限取り組んでおくべきことが2つある。
経営目標を定める
「iPhoneアプリが必要だ」「クラウドを使う必要がある」などのテクノロジ面での判断でモバイルの取り組みを始めることは勧められない。モバイルはビジネスのためにあるのであり、本末転倒になってはならない。ビジネス上の必要条件を検討したり、解決したいビジネス上の課題をまとめ、それらの問題を解決する利用シナリオを立案する必要がある。
例えば、スタッフにタブレットを配布することを考えているのであれば、まず必要条件を理解することに時間を割くべきだ。スタッフがタブレットで行う業務関連のタスクと、達成したい成果を明確にしなくてはならない。それができてから初めて、モバイルデバイスで使える生産性アプリを探し始めるべきだろう。無線ネットワークのエリアと通信速度、利用可能性が、タブレットの利用に十分かどうかも確認すること。
業務の一部、例えば会計やプロジェクト管理などをモバイルアプリに移行したいのであれば、カバーする必要のある業務の機能とプロセスをすべて文書化する必要がある。
モバイルを顧客の関与を推進するために活用するのであれば、顧客のニーズを十分に理解しなくてはならない。そのニーズは、平均的なスマートフォンユーザーのニーズとは違っているかも知れない。
企業文化と組織の変更を管理する
モバイル導入の取り組みは、技術的な変化というよりは企業文化の変化を意味しており、業務部門やチームのリーダーは、モバイルを使った業務文化を教え、育て、支えなくてはならない。これはテクノロジとはあまり関係がなく、重要なのはチェンジマネジメントプロセスの背後にあるリーダーシップだ。リーダーはスタッフが同じ建物にいないような業務環境を受け入れるだけでなく、それを積極的に推進する必要がある。