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山谷剛史の「中国ビジネス四方山話」

中国スマホゲーム産業に潜むグレーゾーン

山谷剛史

2014-09-09 06:30

 「中国人は他のアジア諸国の人達よりも、最新のハイテク製品が大好き」というのは筆者が中国やアジア各国を定期巡回して常々感じるところ。スマートフォンもアジアの他の国々に先駆け、あっという間に浸透。2014年にはついに、ハイテクが苦手な中高年や低賃金労働者までがスマートフォンを持つようになった。リサーチ会社の易観国際(Analysys International)によると、スマートフォンが四半期で1億台強、年間で約5億台が中国向けに出荷されるという。そして2014年は、インターネットに繋がる端末について、スマートフォンがパソコンを上回った。

 Android搭載スマートフォンでは、アプリをインストールするのにGooglePlayを使うのがおなじみだが、ネット規制が高度に発達した中国ではGooglePlayは使えず、メーカーやキャリア、第三者のソフトウェアベンダーが提供するアプリストアを利用するしかない。

 中国でAndroid搭載も含め、スマートフォンが普及した最初のきっかけはAngry Birdsだ。2011年前後はAngry Birdsがスマートフォンのキラーアプリとなった。ずっと人気は継続したが、ここ1年でようやくAngry Birds以外の(主に中国産)ゲームアプリ利用者ばかりとなった。いよいよ中国のスマートフォンユーザーが新しいゲームを探そうとする中、この機とばかりに様々なゲーム系アプリストアが立ち上がり、デベロッパーを囲い込んで自サイトのゲームラインアップを拡充しようと躍起になっている。今夏開催された中国最大のゲームショー「Chinajoy」でも、アプリストアを運営する多くの企業が自社ブースを構えた。

 こうした状況の中で、真面目にオリジナルタイトルを集めるゲーム系アプリストアは少なく、人気ゲームのシステムをそっくり拝借したゲームを配信するだけならまだしも、海賊版を配信するアプリストアが当たり前のようにある。つまり無審査のアプリストアが雨後の筍のように出てきたわけだ。ゲーム系カルチャーが好きな中国人の知人数人に聞いてみたところ、「スマホゲームの海賊版はよく知られている、皆海賊版を利用するのではないか」と全員から同じ内容の回答を受けた。

 だが海賊版には厄介な仕掛けがある、というレポートがいくつも挙がっている。それによると海賊版ゲームアプリは、たいていは正規版をそのまま拝借しているだけでなく、アプリをクラックした上で個人情報を奪うトロイの木馬と広告が仕込まれている。この手の業者のサービスは「クラック」「ウイルス混入」「広告販売」「(個人情報の)アップロード」などを行うという。あるレポートでは、人気のゲーム「fruits ninja」を配布する84のアプリストアのうち、74のアプリストアが配信するアプリは不正な動きが仕込まれた海賊版だったとも。

 こうした状況をビジネスチャンスに変える中国企業も出てくる。ユーティリティ系アプリ「豌豆莢洗白白」は、インストールされたアプリが本物か海賊版かを判断し、広告入りの海賊版があれば警告し、オフィシャル版か広告なし版を提案する。その機能が評価され、一定の利用者を得た。

 悩ましいのは、オフィシャルアプリであっても広告が表示されるのをよしと思わないユーザーが多い点だ。広告不要のニーズに応え、様々な広告消去アプリが登場している。

 コンテンツの正規版化と広告配信ビジネスで先を行く動画コンテンツにおいて似たような例がある。キングソフト(金山軟件)のユーティリティソフトでは、動画広告表示の有無が設定でき、動画配信サイトの「優酷(YOUKU)」が商売の邪魔だと損害賠償を訴えた。裁判を行った北京市海淀区人民法院は優酷の提訴に対し、キングソフトに30万元(約480万円)の損害賠償を命じている。

 動画サイトの広告非表示ツールで裁判の結果が見えたとはいえ、スマートフォンの広告非表示のツールは存在する。きっと訴えられるまで存在し続けるだろう。海賊版は違法で訴訟の対象になることは、海賊版業者も当然知っているはずだが、それでも業界の体制が整うまで悪事を働き続けるだろう。

 最近は日本のゲームベンダーによる中国スマホゲーム市場への進出が話題だが、特にスマホアプリにおいてグレーゾーンは健在。素直に正規版をダウンロードして普通に遊んでくれるユーザーばかりではない。

山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター
2002年より中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、アセアンのITや消費トレンドをIT系メディア・経済系メディア・トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に「日本人が知らない中国ネットトレンド2014 」「新しい中国人 ネットで団結する若者たち 」など。

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