外資系日本法人の社長交代は唐突に発表されることが少なくない。その際、不可解さが残るのは、交代の理由が一切明らかにされないケースが多いことだ。これはいかがなものか。
SAPジャパン新社長が会見で強調した一言
SAPジャパンが9月18日、新社長に就任した福田譲氏の記者会見を開いた。同社は7月28日、前任の安斎富太郎氏から福田氏へ同日付けで社長交代したことを発表。会見はそれを受けて、福田氏が所信表明を行う場となった。
会見に臨むSAPジャパンの福田譲新社長
福田氏は、「変革を志すすべての人のパートナーである続ける」「会社を変え、社会も変える」の2点を抱負として掲げ、それらを実現するためのキーワードとして「グローバリゼーション」「トランスフォーメーション」「イノベーション」といった3つを挙げた。
会見の内容については関連記事を参照いただくとして、筆者が印象深く感じた福田氏の発言を1つだけ挙げておくと、施策として「SAPジャパンのグローカリゼーション(グローバル+ローカリゼーション)」を説明した際に、「SAPジャパンは独SAPの販社に過ぎないと言われることがある。こうした見方を払拭したい」と語ったことだ。
その対策として、「グローバルで優秀な人材の交流を活発に行うことで、SAPジャパンとして顧客ニーズにしっかり対応していきたい」と、グローバル企業ならではの強みを生かしていく姿勢も強調した。
この「販社に過ぎない」という見方を、外資系日本法人の社長が、しかも新任会見時に自ら話題に挙げることはまずない。もちろん、発言の通り、そうした見方を払拭したいという思いで語ったことだが、そこにはSAPジャパンのプロパーからトップに上り詰めた福田氏の強いこだわりを感じた。
幅広い産業分野の営業や製品事業を経験し、SAPそのものも熟知する福田氏は、早くから社内で頭角を表していたようだ。しかも39歳という若さも新鮮さを醸し出す。クラウド事業へと大きく舵を切りつつある同社をどうリードするか。同氏の手腕が注目されるところだ。