上位サービスとの抱き合わせ
事業としては、価格の値下げ戦略にによる収益のロスを、どこか他で回収する必要があります。特にストレージサービスでの価格戦争が激しく、その収益ロスを解消するために、自社の提供する上位のサービスとの抱き合わせで、ストレージを低価格、もしくは無償で提供するサービスの発表も活発です。
上位サービスは、仮想CPUやストレージと比較して、マージンが比較的高いものが多く、その収益で顧客獲得(短期間に次々と同種のサービスを乗り換える移り気な顧客“Churn”の防止) を狙ったものが多いです。
やはり、クラウド事業において、顧客のデータをしっかり押さえることが、他のサービスを利用してもらうへの鍵になっていることと、他社への寝返りを防止する戦略として最も重要なものとして考えられているため、各社、ストレージ戦略は重要な課題として考えられているようです。
最近、3カ月間で発表された各社のストレージ関連の「抱き合わせ戦略」を下記の通り、整理します。
- Box
- ビジネスユーザーに無制限ストレージ提供
- Office 365と連携
- Microsoft
- Office 365ユーザーに1Tバイト無償ストレージ提供
- OneDrive for Businessユーザーに1Tバイト無償提供することを発表
- Google
- パートナー企業と結託:Pazura経由で2Tバイト無償ストレージ提供
- Google Drive for Workユーザーに無制限ストレージ提供
- Google+ユーザーのコンテンツ、Google Docsファイルは無制限
- Amazon
- Zocaloは200Gバイトを月5ドルで提供
- Amazon WorkSpacesユーザーにはZocaloを50Gバイト無償で提供
- Amazonで購入したデジタルコンテンツ(Kindle含む)は全て無料でクラウドスト レージを利用
- Amazonのスマホは写真のクラウドストレージは無制限
- Dropbox
- 5ユーザー以上の組織に無制限ストレージ提供
上記のような状況を見るにあたり、クラウドストレージは既に単体としての事業では成立しにくい市場になっており、日本のクラウド各社も、応用性の高い、戦略的なストレージ戦略を打ち出すことが重要な課題になると考えられます。
逆の考え方をすると、クラウドベンダーとしては、上位のサービスの魅力はもちろんですが、それに加えて、下位のサービス(CPUやストレージ、通信)の低コスト化も実施し、それを強くアピールすることが重要な戦略として必要になる、と分析できます。