このように、CINOとは、一言で言えば従業員価値を最適化することに最高責任を負う者ということになる。そしてその人材は、デジタルテクノロジに精通した情報システム部門から輩出されるべきだ。なぜならば、具体的な実現手段であるデジタルテクノロジへの造詣が深くなければ、バランスの良い業務環境をデザインできないからである。
ここで述べているバランスとは、情報セキュリティと利便性のバランスや、投資コストと効果のバランスなどである。CINOはどのような状況でも、従業員価値を最適化する「ベストバランス」を提案・判断できる人材(または組織)でなければならない。
それでもワークスタイル変革が進まないわけ
連載2回目となった本稿では、War for Talent時代のワークスタイル変革の定義を「従業員価値の最適化」とし、それをコミットする最高責任者としてCINOを設置すべしと結んだ。しかし、そう簡単には進まないのがワークスタイル変革だ。次回は、一度従業員の目線に立ち返って彼らの置かれている状況を分析し、従業員の要望や要求の本質を追う。デジタルテクノロジによって従業員価値をバリューシフトするためのポイントについて考察していきたい。
- 千葉 友範
- デロイト トーマツ コンサルティング マネージャー 大学院在籍中にIT系ベンチャー設立に参画を経て現在に至る。業務改革プロジェクトを中心に実施し、近年では、デジタルデバイスを活用したワークスタイルチェンジや販売力強化など、戦略策定から実行支援までプロジェクトを多数実施。「会社で使う タブレット・スマートフォン2013」など執筆多数。
- 林 大介
- デロイト トーマツ コンサルティング シニアコンサルタント 電機メーカのエンジニア、通信システムインテグレーターのセールスを経てコンサルティングの道へ。ネットワーク、モバイルを中心とした戦略立案、新規事業開拓、テクニカルアドバイザリーを中心としたプロジェクトを多数実施。昨今はクラウド、M2M、IoTなどの技術トレンドを背景にしたワークスタイル変革に注力し、変革実行支援やソリューション販売支援などを手がける。