デジタルバリューシフト

ワークスタイル変革の現在地--従業員価値最適化にはデジタルテクノロジが必要 - (page 3)

千葉友範(デロイト トーマツ コンサルティング) 林 大介(デロイト トーマツ コンサルティング)

2014-10-08 07:00

多様性はコミュニケーションギャップにつながる

 日本の労働者人口の減少が企業経営に及ぼすもう1つのポイントが、ダイバーシティ(多様性)である。労働者人口の減少は、企業を労働力確保のために海外の人材獲得に駆り立て、社会も夫婦共働きが当たり前になるなど、職場で働く人間の多様性が増していくのは間違いない。

 従業員の多様性が増すことは創造性の面では良い影響を与えそうだが、一方で、価値の最適化を阻むのがさまざまなコミュニケーションギャップ(=壁)である。

 分かりやすい例は言語の壁だろう。成果はさておき、既に社内の公用語を英語にしている企業もある。また、残業に関する意識は日本と海外では大きく違う場合があるがこのような文化や価値観の壁もギャップの1つだ。さらには、そして時間の壁も分厚い。子供を保育園に迎えに行かなければならず、早めの退社を必要とする従業員も居れば、オフショア開発に従事する従業員は、夜中に(時差のある国との間で)電話会議をしなければならない。働いているコアの時間がずれてコミュニケーションが希薄になるのだ。

 空間の壁もある。在宅勤務の要望が社内で挙がっていても、空間のギャップを取り払う手立て、例えば仮想デスクトップなどの仕組みがなければ導入に踏み切ることができない。他にもジェンダーギャップやジェネレーションギャップ……枚挙にいとまがない。従業員価値の最適化のためには、これらのギャップを取り除く具体的な手段が必要になってくる。

デジタルテクノロジは壁を取り除く

 労働者人口減少時代の従業員価値の最適化について、大きく2つのポイントを挙げた。1つはクリエイティビティの獲得で、もう1つはコミュニケーションギャップの解消である。そして、デジタルテクノロジはその両方に貢献する切り札であるというのが筆者らの主張だ。少し例を挙げていこう。

 まず、クリエイティビティだが、クラウドそしてエンタープライズモバイルの時代になり、人類はすぐ使える無限のコンピューティングパワーを手に入れた。ウェブの記事を忘れないようにクリップするのは一瞬だし、それをどんな端末からでも確認・整理できる。名刺をスキャンすれば自動的にソーシャルグラフが充実していくし、ToDoができたら携帯に話しかけておくだけで良い。

 何よりも重要なのは、こうした機能やサービスを自分の業務に合わせて創意工夫する余地が大きいことだ。エンタープライズモバイルの時代のそれは、コンピュータが机に張り付いていた時代とは比較にならない。しかし、これらのテクノロジは多くの場合、セキュリティ等の理由で従業員に許可されておらず、それがシャドーIT横行の温床になっているケースもある。このような従業員のニーズとのギャップについては稿を改めて触れる予定だ。

 そして、エンタープライズモバイルはコミュニケーションのあり方も変えた。手元のコンピューティングデバイスはあらゆるコミュニケーションとの接点として八面六臂の活躍をする。電話やメール、ビデオ会議、承認・決裁のワークフロー、社内SNSなど、時間や空間の壁を取り払って業務を遂行するためには、デジタルテクノロジは欠かせない。

 言語の壁でさえ、将来的には翻訳サービスの高機能化であっさり取り払われるかもしれないのだ。その翻訳サービスは、本物の通訳のように、失礼にあたるので訳さなくて良いものを自動的に翻訳しない機能まで付いているかもしれない。それならば、文化の壁も怖くはなくなる。従業員価値の最適化の切り札はデジタルテクノロジにあるといっても過言ではないのだ。

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