ゴーンCEOから「3つのSを求められている」:日産自動車 行徳CIO

大河原克行

2014-10-11 08:00

 レッドハットは10月10日、イベント「レッドハット・フォーラム 2014」を開催。「世界で勝つオープンイノベーション」をテーマに、企業向けLinuxディストリビューション「Red Hat Enterprise Linux(RHEL) 7」、オープンソースソフトウェア(OSS)のIaaS環境構築管理ソフトウェア「OpenStack」とPaaS基盤ソフトウェア「OpenShift」、仮想化やストレージといった同社製品を軸にしたセミナーや展示などが行われた。

オープンイノベーションはパワーで実現する

 基調講演に登壇したレッドハット代表取締役社長の廣川裕司氏は「今から7年前に最初のレッドハット・フォーラムを開催したときには、わずか100人の参加だったが、今年は3300人が参加している。昨年は2000人だったことに比べても大きく増加している。この伸びはオープンソースへの関心が年々高まっていることを示している。このイベントを通じてOSSやレッドハットの価値を体験してもらいたい」とイベントの意義を説明した。

廣川裕司氏
レッドハット 代表取締役社長 廣川裕司氏
Jim Whitehurst氏
Red Hat プレジデント兼CEO Jim Whitehurst氏

 「レッドハットは日本で50四半期連続で成長している。OSSは10万を超える開発プロジェクトが進み、100万人を超える開発者がおり、圧倒的な開発力を持つコミュニティを形成している。これを称して“オープンイノベーション”と呼んでいる。Linuxはすでに44%のシェアがあり、Windowsに拮抗している。日本でも23%のシェアを持つ。まだまだ拡大の余地があり、メインフレームやUNIXから移行を促すためのレッドハットマイグレーションプログラムを実施し、すでに4社が移行、50社が移行表明をしている。Windows Server 2003からのRHEL 7への移行プログラムを今日発表した。OSSで世界で勝てるビジネスになるような、みなさんを支援していきたい」(廣川氏)

 米本社のプレジデント兼最高経営責任者(CEO)のJim Whitehurst氏は「私はイノベーションの話をしたい」と前置きして「ここ数年でイノベーションのやり方が大きく変わった。中長期的な視点でイノベーションが起こるのではなく、日々の小さなイノベーションの繰り返しが大きな波となって、大きなイノベーションにつながる」と語った。

 Whitehurst氏は「イノベーションが起きている数が、プロプラエタリのシステムよりもOSSのシステムの方が多いという転換点が、過去2年のどこかで起きているはずだ。オープンイノベーションは、数多くの技術やプロジェクトによって起きている。この中で残る技術や成功する事例は、ユーザー企業の選択によって生まれるものである。マスによって選ばれるものであり、オープンイノベーションはパワーによって実現する。そして、テクノロジの選択は革新の選択であるともいえる」などと語った。

 「Red Hatは、ユーザー企業やコントリビューター、パートナーのコミュニティで、先導役としての役割を果たすため、より良いテクノロジを生み出すオープンソースのスタイルを実現することを目指す。80人のCIO(最高情報責任者)を対象に調査した結果、5年後に戦略的なクラウドITサプライヤーはどこかという設問に対して、Red Hatは3番目に入った。これはOSSが大切であるという認識の表れだといえる」(Whitehurst氏)

11万3000人に対してIT部門は1000人強

 特別講演では、日産自動車 グローバルコーポレート IS/ITアライアンスグローバルバイスプレジデント 常務執行役員 CIOの行徳セルソ氏が「日産自動車のグローバルIS/IT戦略『VITESSE』とオープンソース活用によるビジネスイノベーション」をテーマに講演。その内容は、バーチャルフォーラムとしてライブでも配信された。

行徳セルソ氏
日産自動車 グローバルコーポレート IS/ITアライアンスグローバルVP 常務執行役員 CIO 行徳セルソ氏

 行徳氏は、「日産は各地域にIT人材を配置し、統一性と独自性を確保。従業員11万3000人に対してIT部門は1000人強。3年前にはインドに開発拠点を設置。中期経営計画と同期したIS/IT活動を推進している」などと語った。

 同社では、2005年度からの3カ年計画である「日産バリューアップ」、2008年度からの3カ年計画である「日産GT2012」では“BEST(Business Alignment、Enterprise Architecture、Selective Sourcing、Technology Simplification)”と呼ぶIT戦略を推進している。BESTでは、IT基盤の標準化と高効率化、アプリケーションの再利用と標準化促進に取り組んだ。

 2011~2016年度の「NISSAN POWER 88」では、「VITESSE(Value Innovation、TEchnology Simplification、SErvice excellence)」の名称でIT戦略を展開している。

 「VITESSEでは、Value Innovation、Technology Simplification、Service excellenceという3つの観点からNISSAN POWER 88に対してIT投資がどう貢献しているのかも評価している。VITESSEでは、ビジネスイノベーションへの直接貢献を目指し、システム開発のスピードアップと、ビジネスイノベーションを加速するテクノロジの提供を狙う。戦略があっても、狙いや効果がベンダーやパートナーに伝わっていなくては意味がない。ステークホルダーに対して情報を共有している」

 行徳氏はOSS活用について「OSSは、技術の簡素化という点で貢献している。プラットフォームでは、商用アプリケーションサーバのOSS化を図り、RHEL 7や“JBoss Enterprise Application Platform”を採用。共通サービスや開発支援ツール、ビッグデータ基盤といった領域でもOSSを活用している」と説明した。

 「(CEOの)Carlos Ghosnからは、迅速に提供する“Speed”、グローバルレベルでのシステムやプロセス、データを標準化する“Standardization”、使い勝手がよく、必要な情報が容易に手に入る“Simplification”という3つのSを求められている。この3つのSを実現するにはOSSは不可欠」(行徳氏)

 その一方で行徳氏は「OSSは選択肢が広い。成功するためには、IT部門としてOSSのどれを選択するのか、それをどう展開し、どんなベネフィットを得られるかということを考える必要がある」との考えを明らかにした。

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