レッドハットは11月15日、都内で自社イベント「レッドハット・フォーラム 2013」を開催した。午前中のセッションでは、米Red Hatプレジデント兼最高経営責任者(CEO)のJim Whitehurst氏の基調講演、ジャーナリスト田原総一朗氏による特別基調講演、ユーザー企業の役員3氏が自社内でのOSS活用を語るセッション、ユーザー会会長によるスピーチが行われた。
オープンイノベーションモデルが重要に
オープニングではレッドハット代表取締役社長の廣川裕司氏が挨拶に立った。廣川氏は1993年の会社設立から20年という節目を迎えたこと、今回のイベントへの登録が3200人で、うちエンドユーザー企業からの参加が1500人を数えるなど日本最大のオープンソースソフトウェア(OSS)のイベントに成長したことを紹介した。ビジネスとしても「最初の10年間は、ライセンス無料では商売できないと批判され厳しい時代だったが、“Red Hat Enterprise Linux(RHEL)”をx86サーバで展開してからは11年連続46四半期連続で成長を続けている」とアピールした。
レッドハット 代表取締役社長 廣川裕司氏
「毎年20%近く売り上げを伸ばしてきた。今では10万を超すプロジェクトがあり、100万人のエンジニアが参加している。だが、成長は始まったばかりだ。ビッグデータ、ストレージ仮想化、ネットワーク仮想化、クラウド管理、分散処理など、データセンターの中にとどまらない領域でオープンソースが使われるようになった。これらはOSSから生まれたと言っても過言ではない。今後も、オープンソースによる技術革新を進めるユーザー、開発者、コントリビューター、パートナーの橋渡しとなることをミッションとして取り組んでいく」(廣川氏)
レッドハットでは現在、クラウド、ミドルウェア、プラットフォーム、仮想化、ストレージ、5つの領域で製品を展開していくと廣川氏は説明した。
続いて、Whitehurst氏が「Connectiong to a community of Innovation」と題して基調講演を行い、オープンソースの重要性と同社が進める「オープンイノベーションモデル」の展望を語った。Whitehurst氏は、ビッグデータ、モバイル、クラウド、ソーシャルといった近年のトレンドについて、OSSに関するパラダイムシフトが背景にあると主張した。
Red Hat プレジデント兼CEO Jim Whitehurst氏
「ユーザー自身がテクノロジを開発し、それをコミュニティに公開して発展させていくようになった。たとえばGoogleやAmazon、Facebookがそうだ。それによって、何が起きたか。ユーザーが爆発的に増え、そのフィードバックが増えることでテノクロジが進歩した。ビッグデータがいい例だ。GoogleやYahoo!は技術を共同で開発していかなければならないと考えた。ユーザードリブンの技術が生まれ、ユーザーが増え、イノベーションが加速した」(Whitehurst氏)
Whitehurst氏は、Facebookの元最高技術責任者(CTO)になぜOSSだけを利用するのかを聞いたことがあるという。すると、“モラルの問題”だと答えたという。モラルの問題というのは、競合他社と比べて少しだけエコだったり、少しだけよい、といったことだ。
「だが、そうした環境で継続的に仕事をすることに意味がある。アプリケーションを作ろうとしたら、そのインフラがなかった。そこで、オープンなテクノロジでインフラを少しずつ作った。そして、その小さな積み重ねが、あるとき爆発的なイノベーションにつながったのだ」(同氏)
オープンイノベーションモデルとは、こうしたコミュニティをベースとした開発で、イノベーションを生み出す方法のことだ。大切なことは、コードがオープンになっているだけでなく、それをもとにコミュニティを構築し、そしてそれを大規模に発展させていくことができる点だ。
「プロプライエタリなソフトウェアと比べて、スケールが全く違う。巨大企業1社で1万人のエンジニアを雇ってソフトウェアを作ることができるかもしれない。だが、オープンソースでは100万人のエンジニアがソフトウェアを開発する。規模が全く違う。Microsoftもかつてはビッグデータ関連技術を独自に開発していたが、今ではHadoopに力を入れている」(同氏)