--RedHatのシェアが大きい理由は何か。
ビジネスモデルです。ビジネスモデルはオープンソースを商材として扱うだけではできません。ユーザーとパートナーと開発コミュニティに対し、レッドハットが検証や互換性をチェックして製品化すること――それぞれの媒体というか、ペイスティング (糊付け) の役割ができたことでビジネスモデルを作れたと思います。これらの要素が一体となって、初めて世界トップのソフトウェアに太刀打ちできるようになりました。
レッドハットの特長は、オープンソースのものを企業のメインフレームやUNIXサーバの代替にまで持って行ったところだと思います。そのためにはサーバ企業やアプリケーションプロバイダーといったパートナーとのコラボレーションが必要になります。これは個人ではできません。レッドハットだからできたことです。
現在のIntelやIAサーバのハードウェアメーカーを含め、開発と検証のコラボレーションとコミュニティをパートナーと作り上げたのです。そこにユーザーを引き込んで使ってもらい、意見をコミュニティにフィードバックするという媒体になっています。事実、米国では50数期連続して成長していますし、日本でも私が着任して以来、7年連続で成長を続けています。
--サポートはどうか。
サポートがわれわれの一番の肝で、レッドハットの価値でもあります。日本のユーザーには日本語で24時間、Linuxもミドルウェア「JBoss」も対応できるサポートエンジニアが数多くいます。これは他社にはまねできないことです。日本語のサポートエンジニアがほとんどいないのですから。今は多分ゼロだと思います。もちろん英語で世界中のグローバルサポートのエンジニアもいますが、日本語でできるというところが一番の強みで差別化できるポイントになります。
--代表として一番注力していることは何か。
ひとつは内部的なこととして、人材の育成に力を入れています。個々のレベルではリーダーシップと営業力。それと核になるリーダーの育成です。レッドハットは数百人の組織ですが、100万人を超す日本のIT業界をリードできるポジションにいます。リーダーとフォロワーの差は10倍くらい違うわけです。だから、われわれの会社も10人で1000人を動かす、1万人を動かすようなリーダーなるよう育成しています。
育成で特に注力しているのは、「人を動かす力」です。ティーチングではなくコーチングですね。ティーチングは、例えば飢餓に苦しむ地域の人に米や肉、魚などを直接与えることです。一方、コーチングは米の作り方や魚の釣り方、畜産などの生産方法を教えることです。コーチングをすることによって、どんどんスケールしていきますし、長期間の成功につながります。
外部的には、オープンソースで日本のITに革新を起こすことに注力しています。日本のデータセンターやテクノロジ、製品やサービスは、欧米より3年から5年遅れているという認識です。だから、いまだにメインフレームに頼っています。この感覚は、私が着任した6~7年前から変わりません。そのため世界のトップレベルのクラウドやビッグデータ、コンパイルを使ったシステムを作ることに注力しています。