オンプレミスとクラウドを対立軸でとらえないのが有効--ノークリサーチ

NO BUDGET

2015-01-15 07:00

 ノークリサーチは1月14日、業務システムに関連するトピックを対象とした「2015年中堅・中小企業のIT活用における注目ポイントと展望(基本インフラ編)」を発表した。同社では、オンプレミスとクラウドを対立軸で捉えずに取捨選択の幅を持たせることが最も有効だとしている。

・サーバ導入の提案では「時間軸で見たハイブリッドクラウド」という視点を持つことが大切


2014年版中堅・中小企業におけるサーバ管理課題の実態と展望レポート(ノークリサーチ提供)

 2014年に引き続き2015年も、オンプレミスからクラウドへのシフトが着実に進むとみられる。しかし大企業に比べて中堅・中小企業では依然として自社内設置が多くを占めると考えられ、その要因としては2つの点が挙げられる。

 一つは「クラウド移行が片道切符になりやすい」こと。大企業ほどサーバ資産のボリュームが大きくないことから、クラウドへの移行によるメリットに確信を持ちづらい。そのため、もし期待通りでなかったときには戻れる可能性を残しておきたい、というニーズが潜在的に存在する。

 事実、今後のクラウド活用の意向として、「仮想化されたサーバ環境をオンプレミスとクラウドの間で出し入れする」とした回答は少なくない。技術的には、仮想化されたサーバ環境をオンプレミスとクラウドの間で移動・同期することも以前より容易になってきた。

 この機能は事業継続の文脈で紹介されることが多いが、今後は上記に述べたような潜在ニーズを実現する手段としても検討されることが期待される。

 もう1つの要因は、販社やシステムインテグレーターの取り組み意識だ。クラウドは中長期で見た場合は安定したストックビジネスを実現する有効な手段となるが、短期で見た場合は収益を減少させる作用も併せ持つ。そのため、クラウドへの取り組みが必要であることは分かっていても、その一歩を踏み出せずにいる販社やシステムインテグレーターも少なくない。

 こういった状況を打開するためには、オンプレミスからクラウドへ移行する際のビジネス上のインパクトを軽減する工夫が必要となってくる。

 「ハイブリッドクラウド」は自社内環境とクラウド間でシステムデータを連携するという意味で用いられるが、中堅・中小企業においてはシステムのライフサイクルに合わせて適材適所で置き場所を変えるといった「時間軸で見た場合のハイブリッドクラウド」が重要になってくると考えられる。

・既存ファイルサーバとオンラインストレージサービスの兼ね合いがどうなるかが注目点


2014年版中堅・中小企業のITアプリケーション利用実態と評価レポート(ノークリサーチ提供)

 ストレージ関連では、大企業向けでFlashストレージが注目を集める一方、中堅・中小企業において活発な動きが見られるのがファイルサーバとオンラインストレージサービスとなっている。今後注目すべきなのは、「既存のファイルサーバからオンラインストレージサービスへの移行はどの程度まで進むのか」といった観点だ。

 上のグラフでみると、ファイルサーバを含む社内設置型文書システムとオンラインストレージサービスの導入割合は、年商20億円未満や年商300億円以上~500億円未満では同程度となっている。これらは、既存ファイルサーバのクラウド移行、連携でなく、「新たなIT活用シーンなどに伴う新規の導入」によるものと考えられる。

 具体的には、旧来型メール環境からの移行(年商20億円未満で比較的多い)や情報系システム関連のコスト削減(年商300億円以上~500億円未満で比較的多い)を契機とし、「オンラインストレージサービスを含むコラボレーション系SaaSを新たに導入する」「個人向けサービスを企業向けにアップグレードする」「スマートデバイス活用におけるデータストアとして活用する」といった導入、活用のシナリオだ。

 一方、依然として自社内設置型文書管理システムが多い年商20億円以上~300億円未満の企業層(中小の上位企業層および中堅の下位ならびに中位企業層)では、どのようなシナリオで展開するのか。この規模の企業層の動向が、今後の中堅・中小企業におけるストレージ市場を大きく左右するものと考えられる。

・スマートデバイスやDaaSといった多様な選択肢を活用シーンと共に提示することが重要


2014年版中堅・中小企業におけるPC環境の実態と展望レポート(ノークリサーチ提供)

 一般消費者向けも含めたPCの出荷台数は減少の一途をたどっており、「PC離れ」が進んでいると言われている。中堅、中小企業に導入されているPCがスマートフォンやタブレットに一気に代替されるわけではないが、PC販売を主体とする販社などが従来型のPC販売のみで業績を向上させることは難しいと考えられる。

 「今後、PCの新規導入や入れ替えを行う予定がある」と回答した中堅、中小企業に対して実施時期をたずね、その結果をタブレット移行も含めた形態別に集計した(Windows XP移行に関連する影響を除くため、Windows XPからの移行を既に完了させている企業に対象を絞ってある)ところ、デスクトップPCやノートPCはタブレットと比べて導入や入れ替えの時期がだいぶ先になっている状況が読み取れる。

 つまり「既存のPCが急になくなることはない。ただし導入/更新のサイクルは長期であり、更新需要が見込める機会は減ってきている」ということができる。これはWindows XP搭載PCが長期間に渡って利用されてきたことからも明らかだ。

 一方、スマートデバイスを導入済み、導入予定の中堅・中小企業に対し、端末形状に関する今後の方針をたずねた結果、「スマートフォンとタブレットを業務場面によって使い分ける」との回答が50%超と最も多く、どちらか一方に偏らない幅広い提案力が求められていることが分かる。

 また、Windows XPからの移行時にはDaaSへの大きなシフトは見られなかったが、行政が2014年から進めているテレワークの取り組みや地域活性化施策などを踏まえると、再度DaaSに注目が集まる可能性もある。同社では、PC環境の変化が必然となる具体的な活用シーンを提示し、「なぜスマートデバイスやDaaSが必要なのか」をきちんと伝えることが重要だという。

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