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「Apple Car」とテスラの改めて気になる関係--バッテリとインフラをめぐる話題 - (page 2)

三国大洋

2015-02-21 07:00

 ところで、「Apple Car」に関するこのWSJ記事が出る前日に、Tesla Motors(Tesla)の決算発表のニュースが流れていた。「Model S」の2014年10-12月期の販売台数が自社の目標より約1300台ほど少ない9834台にとどまり、「投資家筋をがっかりさせた」といった見出しの記事がいろいろなところに出ていた。またこれと前後して、Teslaが「大きな期待外れ」となっている中国拠点の人員整理に着手したといった話も流れ、なかには「3カ月間で120台しか売れなかった」という話もあった(人員整理=幹部の解雇も当然の措置といった状況らしい)。

 なお「Model S」の中国への輸出台数は「累計で約3500台」とBloomberg記事にはあるので、販売開始(受注スタートは2014年春)当初はそれなりの数(少なくとも1四半期あたり数千台)の注文があったということが推測される。また後述するNYTimes記事のなかには、「初年度の目標台数が5000台」だったという一節もある。

 この中国での販売不振の大きな原因は、充電インフラ網の整備がほとんど進んでいないことで、10日付のNYTimes記事にはそのあたりの実状が詳しく描かれている。

 この記事中にはたとえば「無料で急速充電できるスーパーチャージャーステーション(Supercharger station)の数が、米国の150カ所、欧州の120カ所に対し、中国にはまだ52カ所(20都市)しかない」「Model Sに対応する充電スタンドを備えた施設の数も約70都市に800カ所程度(スーパーチャージャーステーションは含まず)」「中国の特に都市部では集合住宅に住む人も多く、Tesla製の急速充電装置(おそらく電圧を高めるための変圧器を含む)を設置しようと思っても一戸建ての場合のように簡単にはいかない(自宅にガレージがある場合も多い米国とは事情が異なる)」「しかたがないので、Model Sのオーナー同士が『QQ』『Weixin』などのチャット(SMS)を介して情報交換したり、充電装置を融通しあっている」「Telsaの社員でさえ、遠方の街に出張してバッテリ切れになりかけ、QQで助けを求めた(幸い別のTeslaオーナーが近くで見つかり、充電させてもらうことができた)」等々のエピソードなどが並んでいる。

 この記事の終わりの方には、「いま中国で10万ドル以上もするようなModel Sを買うのは、お金持ちのアーリーアダプター層」「何台もクルマを所有できるから、Teslaの充電インフラの問題などはさほど気にしていない」、そして「中央政府でも電気自動車の普及に積極的だから、充電インフラの問題が解決するのも時間の問題だろう」といったオーナーの見方も紹介されている。なお、中国政府の掲げる電気自動車(プラグインハイブリッド車を含む)の普及目標台数は、今年が50万台、そして2020年には500万台となっている。

 Telsaに関する話題でもうひとつ目を引いたのは、同社が据え置き型蓄電装置(stationary battery)の普及にさらに力を入れる考えを示しているというもの。Muskが会長を務めるSolarCityという太陽光発電関連のベンチャーが、家庭や小規模な事業所向けにTesla製のバッテリを提供していること、またTelsaが「GigaFactory」と称する巨大なバッテリ工場の建設を計画していることは以前に触れていた通りだが、12日付のBloomberg記事には同社がこのstationary batteryに関して「ほぼすべての電力会社(utilities)と話し合いをしている」とするTeslaの最高情報責任者(CTO)のコメントが載っている。

 米国には大小あわせて2000社くらい電力会社があるという話も聞いたことがあり、この場合の「ほぼすべて」がどの程度の規模の事業者を指しているのかはよく分からない。

 ただカリフォルニア州を筆頭として電力会社に再生可能エネルギーの達成数値を具体的に定めているところも複数ある――例えば加州大手の1つであるPG&Eでは、2020年までに約1.3ギガワット(100万世帯分)分の蓄電装置購入が義務づけられている、という一節もBloomberg記事中にあるので、Teslaとしてはそうした客筋もしっかり押さえて「GigaFactory」の稼働率を確保したい、ということだろう。

 SolarCityは、基本的に既存の電力、ガス会社と顧客を奪い合う競合関係にある。SolarCityのビジネスを「分散型の発電所」とする見方・評価の仕方も目にした覚えがある。その点を考えると、Teslaが電力、ガス会社に据置型蓄電装置を供給するというのは、かなり大きな方向転換にも思われる。また、20億〜30億ドルともいわれる莫大な投資をして「GigaFactory」を実現させるとなれば、それくらいの柔軟性も持ち合わせていなくてはならない、という解釈もできるかもしれない。

 そうした思い切った方向転換(「ピボット」)をTeslaが自動車の分野でもする可能性がはたしてあるのか。もう少し具体的にいうと、Teslaが最終製品(電気自動車)ビジネスでの犠牲をある程度覚悟してでも、GigaFactoryへの投資を生かそうとするような判断を下す局面がくるのか……。Apple Carの可能性を考える上で、そのあたりのTeslaの動きは注目点の1つとなるかもしれない(今のAppleの資金力があれば、わざわざTeslaの手を借りる必要もない、という見方も勿論あろうが)。

 もう1つ、バッテリ開発、調達よりもさらに気になるのは、前述した充電インフラの整備という課題をAppleがどうとらえているか、という点。

 Appleは、春先に発売見通しの「Apple Watch」でもバッテリ駆動時間の延長にずいぶん苦労しているらしいが、以前に記した通りスマートフォンや腕時計端末と電気自動車とでは電池が切れた場合の苦労がまったく異なる。また「ユーザーの経験」を最重要視するブランドとしては、出先での充電時に長い時間待たされるようなものは出せないのではないか。

 これまでのAppleは「他人がつくったインフラにのっかる」のがとても上手だった。そういう「機に乗じる巧みさ」は、例えばiPhoneの本格的成功のきっかけとなった「iPhone 3G」投入時にも見られたし、最近の「Apple Pay」にしても同様だろう(米国でのクレジットカード取り扱い責任に関する法律の変更や、それに合わせた新型POS端末への切り替えの流れなど)。これを裏返すと、「Appleは割の良くないインフラ整備などはまだやったことがない」ということにもなる。

 電気自動車の分野を携帯通信分野にたとえれば、「まだ基地局がぼちぼち建ち始めている段階」といったところになろうか。TeslaがSupercharger station(「基地局」に相当)を自前で展開しつつあるのは前述したとおりで、Appleが本気で電気自動車をやるとなれば、この面倒なインフラの展開まで自分たちでやるか、それとも他者による展開がある程度進んで製品投入の「機が熟す」のを待つか、ということになるはず。

 またSupercharger stationが「一カ所50万ドルくらい」でできるという話もあるが、お金を出せば簡単に片付く問題だけでもないのは、上述の中国での話が示す通り。まあ、Appleの体力ならディーラー網(”Apple Car Store”)を自前で運営し、そこに急速充電装置も設置、というの可能性が十分あり得そうだが……。

 いろいろと分からないことが思い浮かんできてしまい、自分の勉強不足を痛感させられるばかり。この続きはまた別の機会に改めて、とさせていただき、この辺でいったん筆を置くことにする。

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