2016年1月から社会保障と税の共通番号(マイナンバー)制度が実施されるのに伴い、ITベンダー各社が対応ソリューションを打ち出している。ただ、同制度の開始が迫る中で憂鬱な事情も浮き彫りになってきた。
企業にも対応が迫られるマイナンバー制度
マイナンバー制度は、2013年5月に公布された「行政手続きにおける特定の個人を識別するすべての人」に、重複しない12桁の番号の「マイナンバー」が付番され、これまで複数の行政機関で個別に管理されていた個人情報がこの番号に紐付けれらる仕組みである。これまで政府や地方自治体の取り組みに注目が集まっていたが、実は企業にもさまざまな対処が求められる。
そうした中で、NECが2月23日、企業向けのマイナンバー対応ソリューションを発表した。企業のマイナンバー制度への対応に向け、コンサルティングからシステム構築、運用管理、データ利活用支援、従業員教育までトータルに支援するものだ。
マイナンバーは2015年10月からすべての対象者に通知され、企業においては2016年1月までに給与・経理システムなどの既存データとマイナンバーを紐付けるなどのシステム改修が必要となる。
また、マイナンバーを含む個人情報は、「特定個人情報」として従来の個人情報以上に厳格な取り扱い義務が課せられる。企業がこれらの取り扱いに短時間で対応するには、社内規定の見直しなど体制や制度面での整備に加え、システムのセキュリティ強化も求められる。
一方、制度実施に伴って配布されるICカード(個人番号カード)は、政府が2016年1月から国民へ配布する予定で、同月から総務大臣の認可を受けた企業で情報の利用も可能となる。これにより、新たな社会インフラの構築やビジネスへの広がりが期待されている。
マイナンバー制度の仕組み(出典:NEC資料)
こうした企業向けのマイナンバー対応に向けたNECの新ソリューションの詳細については関連記事を参照いただくとして、ここでは同制度の開始が迫る中で浮き彫りになってきた憂鬱な事情に注目したい。
憂慮すべき制度内容の周知不足
というのは、マイナンバー制度の内容についての周知が遅れている実態が明らかになったからだ。内閣府が2月19日に発表した世論調査の結果によると、同制度について「内容を知らない」と答えた人が7割に上ることが分かった。
調査結果を細かく見ると、「内容は知らないが、言葉は聞いたことがある」との回答が43.0%、「知らない」が28.6%で、これらを合わせると71.6%に達した。「内容まで知っている」との回答は28.3%だった。この調査は1月に全国の成人男女計3000人を対象に個別面接方式で実施し、1680人から回答を得たものである。
周知不足については、新ソリューションを発表したNECの戸田文雄 主席政策主幹兼番号事業推進室長も、同社が昨年12月から頻繁に実施しているマイナンバーセミナーの受講者から「制度の内容がよく分からない」との声を聞くケースが多いと語った。
セミナーが盛況なのは、内容を把握しようとする企業の前向きな姿勢の表れだが、裏を返せば周知が遅れていることの証左といえそうだ。
制度開始まで1年を切った段階で、内容を知らない人が7割に上るというのは、非常に憂慮すべき状況だ。このままでは、さまざまな混乱が起きる可能性がある。政府はもちろん、自治体や関連企業もマイナンバーの周知に向けて一層の注力が求められる。