ここで重要なポイントがあります。従来型のITシステム導入においては、その多くの場合、「現行プロセス」が存在し、それを変革、改善する形でIT化が進められきました。しかし、このマーケティング領域においては、現行プロセスが存在しないケースが多々あるのです。
正確にいうと、現行はマーケティングではない形で遂行されてきた内容、例えば、広告と流通向けの営業、営業担当者による個別活動などを、マーケティング施策というまるで新しいプロセスで実現することになるのです。もちろんそれらを100%代替するわけではないという意味においても、現行プロセスが存在しないと言えるでしょう。
そのため、マーケティングオートメーションは、新しい業務プロセスのデザインとともに導入されることが多くなります。よって、「御社は、どのような業務にされることをお考えでしょうか。ご要件をお聞かせください」という(御用聞きのような)スタンスの導入支援ベンダーではなく、新しいプロセスを導入に際し、リーダーシップや実績がある会社を採用する方が失敗のリスクは減ります。選定の際、この「新しい業務プロセスを構築する力」の見極めもIT部門に期待されることの1つかもしれません。

選定が終わるとシステムの構築フェーズに入りますが、これは、前述の(実行中に得られる結果によって適宜修正をかけていくといった)時間軸での作業となります。短い場合は数週間、長くても半年で1次カットオーバーに持っていくようなケースが大半になります。マーケティングオートメーションにおいては、いわゆるシステムの作り込みはあまり存在しません。
初期のセットアップは、マーケティングオートメーションで使うドメインの設定、ウェブサイトのデザインに合わせたページテンプレートの準備、既存のウェブフォームの置き換え、活動の対象となる見込み客/既存顧客データの投入、SFAなど周辺システムとの連携、手動データ連携プロセスの設計などになります。
加えて、マーケティングオートメーションならではの、スコアリングの設定や自動メール送信の設定などの作業も発生しますが、これらは、初期のみに実施することではなく、これらこそがマーケティングオートメーションを使っていくなかで定常的に必要なシステム操作です。