NECは4月13日、土中水分量を解析することで土砂斜面の崩壊の危険度をリアルタイム、高精度に算出できる新技術を開発したと発表した。今後、自治体、大学、研究機関などと共同で同技術の実証実験を進め、今年度中の実用化を目指す。
自治体が土砂災害に伴う避難勧告や指示を発令する際の判断情報の1つとして、現在では都道府県と気象庁が共同で発表する「土砂災害警戒情報」が主に用いられている。
さらに一部の自治体では、斜面に設置した監視カメラやワイヤセンサ、傾斜センサなどの情報も収集しながら、実際に避難すべき地域を特定し、避難に伴い統合的に判断している。だが、これらのセンサでは前兆現象を把握してから実際の崩壊が起こるまで、わずかな時間しかないこともある。
これに対し、より早い段階から土砂の状態を把握する方法として、土中に土中水分計、間隙水圧計、ひずみ計など専用のセンサを複数組み合わせて設置し、「土砂の重量」「水圧」「土砂の粘着力」「土砂の摩擦」など土砂崩壊の危険度の指標となる土中の多様なデータを収集、解析し、土砂斜面の危険度を算出する技術が開発されている。
しかし、この技術では指標ごとに専用のセンサを土中に設置するため、コスト面での課題があった。
今回開発した技術は、こうした複数の指標データを「土砂に含まれる水分量」のみから算出可能にし、水分量を計測するだけで、リアルタイム、高精度に斜面の危険度を把握できるようにする。
NECでは、同技術を用いた実証試験として、人工斜面への降雨実験を実施。斜面の「危険度」を算出した結果、土砂災害の危険性ありと判定した10~40分後に実際に斜面崩壊が発生することを確認したという。
この技術では、従来技術に比べ約3分の1のセンサ数で斜面の危険度を算出できるため、従来と同じコストでより広範囲にセンサを設置できる。土砂災害の危険性がある斜面を広く高精度に把握でき、住民の避難時間や安全を従来以上に確保しながら、迅速な避難勧告や指示を発信できるようにする。