2014年には、合計で2300億ユーロ相当の合併があり、現在では、大手通信事業者10社のうち8社は、モバイルや固定回線など幅広い領域にまたがっているとSuri氏は述べている。同氏は4月15日に投資家に向けて、「これは集束的な市場であり、モバイル専業の事業者はわずか30%という状況だった。われわれは固定回線事業で確固たる地位を築く必要があった」と語った。
そこでAlcatel-Lucentが登場する。合併後の会社は、固定回線によるブロードバンドおよびLTEサービスでは第1位、IPルーティングと、キャリアおよびIPライセンシングではEricssonに次いで第2位になる見込みだ。合併することで、この2社が対象とする市場は、Nokia単独での840億ユーロから1300億ユーロへと約50%増加し、事業に「強力な成長曲線」を与えるとSuri氏は述べている。
「未来のネットワークに対する要求は、ますます複雑になっている。切れ目がなく、場所を問わないアクセスが求められるのと同時に、ネットワークアナリティクスとネットワークインテリジェンスへの要求も高まり続けている」(Suri氏)
この2社は、固定回線ネットワークとモバイルネットワークの両方で、より大きなプレゼンスのあるビジネスを生み出すだけでなく、地理的な重複がない点でも良い組み合わせだとしている。例えばAlcatel-Lucentは米国でのプレゼンスが大きいが、Nokiaは中国とアジア太平洋地域に確かな足がかりがある。
両社の協議は2013年に始まった。Nokiaの携帯電話事業売却のプロセスが始まった時期だ。
大きさではなく広がりを求めて
Nokiaの最高財務責任者(CFO)のTimo Ihamuotila氏によれば、決定を後押ししたのは、「プログラム可能な世界というわれわれの新しいビジョン」だという。「この世界では、モノのインターネットと、大規模なクラウドベースアナリティクス、そしてそのアナリティクスの結果に基づいて現実世界の変化に影響を及ぼす能力が1つになっている。このプログラム可能な世界の先頭に立つには、マクロ無線やWi-Fi、スモールセル、固定回線から、IPルーティングまで、さまざまな分野に精通していると同時に、一貫したサービス体験を実現する必要がある」(Ihamuotila氏)。この合併の原動力は、「大きさではなく広がり」だ。Nokiaはモバイルブロードバンドの分野で良い位置につけていたが、他の必要なテクノロジ領域全てに対応する「広がり」がなかったのだと、Ihamuotila氏は述べている。
合併後の会社では、不動産、IT、管理業務などの間接費の部分で支出を減らせるほか、重複する販売活動を縮小したり、調達プロセスを改善したりすることで、2017年までに利払いを2億ユーロ減らすとともに、2019年までに事業費を9億ユーロ削減できる見込みだ。
Suri氏は、合併の結果として人員整理が予定されていることを認めたが、対象となる分野や人数の規模については明らかにしなかった。
NokiaとAlcatelを合わせれば、正味現金収支は74億ユーロ、2014年の通期売上高は約260億ユーロになる。
この買収では、Alcatel-Lucentの1株に対して新会社の0.55株が割り当てられる。Alcatel-Lucentの価値は156億ユーロと評価されている。
買収は規制当局と株主の承認を経て、2016年中頃までに手続きが完了する見通しだ。両社の統合完了後の新会社はフィンランドに本社を置き、Alcatel-Lucentの拠点であるフランスはセキュリティと5G研究の中心地になる予定である。
新会社は4万人の研究開発スタッフを抱えることになる。そのうち3万5000人はソフトウェアエンジニアだ。研究活動には年間約47億ユーロのコストが発生する。新会社は将来、その研究開発能力をさらに拡大したい考えだ、とSuri氏は述べている。しかし、依然として一部の分野が削減対象になる可能性は残っている。例えば、ワイヤレス分野の研究開発など、両社がそれぞれ独自に研究に取り組んでいる分野があるためだ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。