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2020年のIPAの姿とは--CIOの立石氏 - (page 4)

吉澤亨史 山田竜司 (編集部)

2015-04-23 13:15

――モノのインターネット(IoT)など、情報セキュリティに関わる製品が増えているが事業継続やセキュリティはどう変わるか。

 これまでの体制では不十分であるとして、JPCERTやNISCなどで強化をしようと情報共有をしていますが、それは基本的に伝言ゲームなのですね。つまり、人が介在して情報に解釈を加えて人に伝えていく図式です。しかし、M2M、IoTの世界になると、人間を介さずにセンサ群が、特に制御システムなどプラントやインフラを管理しているようなシステムは、人間を介さずに直接データをやり取りします。そのときに、おそらく人間が話している情報共有システムは機能しなくなると私は思っています。

 それは、何億個というセンサをコントロールしている制御プログラムにマルウェアが入ると、各デバイスに一気に拡散します。そのときに人間が一個ずつ情報を届けていたら間に合いません。そういうセキュリティインシデントに関する情報も、ある程度自動化しなければなりません。そのために、どういうプロトコルを使うなど共有の仕組みについては全く白紙の状態です。これはモノに囲まれてつながるITの世界で安心、安全に生きていくかを考えたら、どうしても持たなければならないインフラだと思います。そのためには産官学の連携が必要だと考えています。

 もうひとつ、変わってきたのは特許だと感じています。トヨタやパナソニックは昔、自らの特許は囲い込んでおり、秘中の秘の扱いでした。それを今、(トヨタの水素自動車の特許など)完全に無償でオープンにするというの取り組みがあるのは、ITが“つながる力”を持っており、他との連携が必要だからです。スマートコミュニティやスマートシティという切り口で、街全体がパナソニック製品、街全体が日産の電気自動車で統一されていることなど、考えられないですよね。日立の冷蔵庫もあれば東芝の冷蔵庫もあります。そういうものがつながったときにうまく機能するかどうかの実証は、どこもやっていないのです。

 そういった異機種環境がつながったときの安全性を検証する仕組みが共通に必要になってくると思います。1つ1つの組み合わせについて接続実験をするわけにはいきません。でも、モノ同士がつながって1つのサービスを形成していかなければならない現実が起こりつつありますから、相互に接続して検証する仕組みを作らなければなりません。各ベンダーごとに検証センターはありますが、そこをいくら拡張しても追いつかないでしょう。

――CIOとして課題に感じていることは。

 シャドーITです。IPAは業務上では、ITやインフラそのものに対する従業員のリテラシーは低くないと感じています。、悪い面もあり、BYOD(企業での個人用デバイスの使用)でもないですが、皆さん官給品でなく自分のデバイスでやりたいと思っているようです。一方、セキュリティの観点ではそこの両立は結構難しい。私たちは2015年度からシンクライアントへの移行を含めて検討を始めています。

 とはいえ、いきなり全面展開はしません。まずは一部署でモデル展開をして、そこで反省材料が必ず出ます。私は業務を邪魔するようなシステムではいけないと思っています。業務改革をしなければなりませんが、業務改悪はしてはいけない。変えてはいけないところはそのままに、変えるべきところを定める。そういうITの入り方のさじ加減を見つけるのためには、やはり実際に導入してそこでの反省を生かして全面展開していくことだと思います。

 もう1つは、役員である以上、コストカッターにならないといけません。湯水のように予算があるわけでもありません。たとえば紙の削減もITの仕事であると思っています。IPAは全独立法人の中でペーパーレスで3年連続首位です。これはJALの取り組みと同じで、部品箱にネジ1本の値段を書かなければダメという備品管理を徹底しているからです。コピー1枚も空気のように考えがちですが、それでは困ります。コピー枚数でいけば、2014年度では年間120万円分くらい削減できています。目標は、5年で紙の量を3割削減ですが、現実にはもっと削減しています。まだまだ紙にしなくてもいい業務はあります。

 どの企業でも、システムに手を入れていくときはお金がかかります。今までの予算の組み立てからいくと、ITは予算を取られる部署として扱われているようなケースがあります。他の事業部から圧力がかかったりしますよね。そこで私は「システム部門は職員に対する情報サービス業になれ」と言っています。自前でやるとかかるコストを、同じサービスレベルで共通基盤でやるとコストが下げられますから。

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