通常、業務部門にはシステム開発やデータベースの基礎知識を持つ人材は少ない。よって、自分たちで採用したアプリケーションを提供するベンダーの知恵を借りながら、そのツールを使うことを前提にデータ活用の方法を模索していく。
しかし、ベンダーがその企業の基幹システム側の状況と社内データの所在に情シスの人間よりも詳しいということはないため、業務部門は最適な意思決定ができていないのが普通だ。
こうして、限定された情報をもとにカスタマイズを繰り返し、局所最適が進んでいくわけだが、そもそも最初から「事業競争力を高める」というゴールを目指して情シスも議論に参加していれば、リスクとメリットの是非の判断を重ねながら、最適解を検討していくことが可能なのだ。
競争力向上のために、なぜ、顧客データをウェブ分析アプリケーション側でも収集したいと考えるのか。通常、以下のような理由であることが多い。
- 顧客ID単位でサイト内の行動を分析し、「顧客理解」を進めたい
- ウェブ上の行動をイベントとして見立てて、イベントベースの「顧客とのコミュニケーション」をできるようにし、セッションあたりの購入完了率を改善したい
上記が理由であるならば、プライベートDMPの利用、データウェアハウス、データマートの活用、既存の顧客マスタ側での顧客IDに紐作りリレーションを追加するなど、無理してまでウェブ分析アプリケーション側に顧客特定可能なデータを寄せなくても、実現のための選択肢を検討できる。
そして、企業全体や業務部門の収益計画の予実と、選択肢ごとの期待効果も比較検討しながら、優先順位を決めて何に投資すべきかを決めることができる。
このように攻めの協業とは、企業全体で目指すゴール、すなわち「売り上げと利益の拡大」をともに目指し、その実現に向けて活動することである。
情シスは、業務部門だけではテクノロジとデータ活用に関する強い仮説を出しきれないと認識し、そこに貢献する立場で解決策を提案する。業務部門は自分たちには未知の可能性があることを常に意識しながら、最適な意思決定に向けて検討する。
そうすれば、両者とも「攻め」に転じることができるのだ。