さらに大きく
AWSの優勢さを測る指標として、マジック・クアドラントと同じくらい有効なのが導入率だ。そしてこの面では、AWSの強さは圧倒的だと言える。
Gartnerによれば、2014年のAWSのクラウド計算能力は、続く14の競合サービスの合計の5倍だったが、2015年には、後続14サービスの合計の10倍を超えた。
これを表現する言葉は「覇権」しかない。
しかも、AWSの市場支配力は、不当廉売で得られたものではない。最新の業績発表でも分かるとおり、長年の間何度も値下げを繰り返しているにもかかわらず、AWSの収益性は非常に高い。
Gartnerが書いているように、AWSの市場支配力は、イノベーションによってもたらされたものだ。
AWSは業界のオピニオンリーダーだ。このサービスは並外れて革新的で、極めて機敏であり、市場への対応も素早い。AWSはもっとも充実したIaaSの機能とPaaS的な能力を持っている。同サービスは急速にサービス内容を拡大し、高レベルのソリューションを提供し続けている。Microsoft、Googleとの競争がさらに激しくなり始めているものの、AWSには数年分に相当する競争上の優位がある。
この意味で、AWSは「安全な選択肢」になっているとGartnerは述べている。これは、当面の間は企業がAWSを選択する状況が続くということだ。Microsoftも以前、同じようにデスクトップの世界で市場支配力を手に入れた。Amazon、Microsoftがともに本拠を置くシアトルには、何か特別なものがあるのかもしれない。
AWSに追いつけるのは?
GartnerはAWSが今後数年にわたってリードを維持すると予想している。しかし特にMicrosoftは、黙ってこの状況を受け入れているわけではない。
Gartnerによれば、Microsoft Azureの計算能力は、後続の12サービスを合わせた量の2倍だ。この差は大きい。
多くの企業はAWSで未来に向けてインフラを作ろうとしているが、同時にMicrosoft Azureで過去のインフラ投資を未来に繋ごうとしている企業も多い。Gartnerが強調するように、「Microsoft AzureにはIaaS、PaaSのコンポーネントが統合されて包含されており、全体として1つであるように感じられ、そのように動作する。Microsoftは新しい機能やサービスを素早く繰り出しており、その中には他のサービスにはないものも含まれている」。
言い換えれば、「Microsoft Azureが持つインフラとプラットフォームサービスのビジョンでは、それぞれが単独の製品として優れているだけでなく、オンプレミスのMicrosoftインフラ(「Hyper-V」「Windows Server」「Active Directory」「System Center」などを基盤とする)、開発ツール(「Visual Studio」と「Team Foundation Server」を含む)、アプリケーションを継ぎ目なく拡張し、相互運用を可能にする。これは、Microsoft製品を使用している多くの企業にとって、魅力的なビジョンだ。
それでも、Microsoftの前途は多難だ。同じことがGoogleにも言える。しかし、少なくともこの2社はAWSと同じ世界にいると言っていい。
クラウドIaaS市場で圧倒的優位に立つAWS、Microsoft、Google以外のサービスはすべて、この分野ではあたかも四捨五入による誤差のようであり、この3サービスに追いつけるほどの特徴は持っていないように見える。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。