ベトナムでビジネスをする

ベトナムとタイの方向性の違い

古川浩規(インフォクラスター) 2015年08月05日 07時00分

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 前回はベトナムとタイの違いについて触れましたが、再びタイを訪問する機会があり、タイの事情について官公庁などでさらに情報を得ることができました。また、帰国後には、東京で開催されたベトナム情報通信大臣との懇談会に参加することができました。こうした体験から、ベトナムとタイの国としての方向性の違いについて感じることがいくつかありましたので、今回も前回に引き続き、ベトナムとタイの違いに触れていきます。

産業集積の進むタイが考えている次の政策

 1人当たりGDPが約6000USドル、失業率が1%以下というタイですが、現地の事情としては、これ以上安価な労働力の供給は難しくなっているようです。官公庁の担当者の指摘では、「これ以上の安価な労働力の供給は、農村部から農業従事者を駆り出すことを意味しており、農村部での農業が成り立たなくなる恐れがある」ということでした。すなわち、タイが今後目指すべき方向性としては、「労働集約型の産業からの脱却」とともに、「労働力の受け皿としての移民政策の実施」が挙げられますが、これは、前回の記事でも簡単に触れました。

 特に「労働集約型の産業からの脱却」は、すでにタイに進出済みの各社にとって当たり前の状況になりつつあるのかもしれません。私がバンコクで聞いた話だけでも、これから高度な自動車用部品の製造を始める企業や、これまでよりもさらに高度な開発技法が必要とされるプログラム開発企業の話を耳にしました。しかし、日本国内から「海外展開をしよう」と考える際には、このような高度化の動きは意外と見えていない点のようです。

 また、すでにタイに数多くの日系企業が進出していることは周知のとおりです。バンコクの公的機関で出た話題としては、「現在把握している進出済み日系企業数は約6000社。このうち約4000社とは実際に電話連絡が取れる状況。業種についても、製造業であったりサービス業であったり、ありとあらゆる業種を確認できる。また、バンコクだけで4万6000人程度の日本人が長期滞在し、タイ全土では6万4000人程度の日本人が長期滞在している」というものです。


設立当初から日本政府が無償資金協力や技術協力で支援を続けているモンクット王工科大学ラカバン校(KMITL)。約170ヘクタール(東京ドーム約36個分)のメインキャンパスと約560ヘクタール(東京ドーム約120個分)のサテライトキャンパスに、2万5000人の学生が在学している。タイ最高峰の工学系大学の一つで、卒業生はタイ国内の各産業界での活躍が期待されている

 私自身、バンコクに滞在していた時には、世界中から集まってくる人の多さや、物の種類の豊富さといったものに驚かされましたが、数字上でも「バンコクには、日系企業の競合他社がすでに多数存在する」ということが分かります。タイでは当たり前のことかもしれませんが、ベトナムからの視点、特にホーチミン市を中心とするベトナム南部地域以外に進出した日系企業にとっては、これまであまり意識してこなかった視点かもしれません。

 そのため、「これからタイに進出して、どのようなビジネスを行おうか」と考えた際、これらの既存のライバル会社とどのような違いを打ち出していくのかという点は悩ましいところだと思います。これは「日系企業同士」という意味だけでなく、日系企業以外との差別化でもあります。

 バンコクには「タイ人コミュニティー以外で、最大のコミュニティー」とも言われるほどの規模を持つチャイナタウンをはじめ、同様の規模のインド人街もすでに存在します。このように、日本人以外もしっかりと根を下ろしている中でのビジネス展開を考えると、これからのタイ進出は、「日系企業の製品は、それだけで良品質である」という古い考え方から脱却し、「自社に世界レベルの商品や技術があって初めて成功する」と考えても過言ではないのかもしれません。

 また、この連載でもすでに書いているように、タイやベトナムに限らず、「海外に行けば何とかなるだろう」ということではなく、「自社の商品は世界で戦える」「自社の商品が、○○国で必要とされている」という商品があり海外展開を行うことこそが、海外展開の成功の秘訣なのかもしれません。

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