津田 それは例えば、商工会議所や経団連、もしくは経済同友会などが経営層の皆さんに、実はサーバというのは昔はこうだったけど、今はこうなっているということをちゃんと説明する機会を得ることが有効だと思いますが、いかがですか?
柳田 はい。そこは有効だと思います。政策的には、データセンターはあくまでも情報の基盤と考えています。データセンターの建物だけの議論するのではなく、利用者、回線、置いてある場所といった要素がどうリンクするかということを議論すべきです。日本のITの活用規模はそれなりに大きく、IT投資の額や比率は諸外国と比べても、それほど遜色(そんしょく)はないんですね。ただ、この10年くらいで米国のトップ企業と日本のトップ企業の業績を比べてみると、格段の差が付いています。その原因は、ITの活用水準にあるのではないかと思います。
それは、本来で言うと割り切ってパッケージサービスを利用するといいのに、例えばERPを持ってきても多くのカスタマイズをしてしまってERPの良さを消してしまったり、何から何まで現場のニーズを基にボトムアップで非効率なシステムを持ってしまっている。情報システムの経費は、本当はライフサイクルで見るべきで、7割以上が保守運用フェーズの費用といわれているのに、そこにあまり着目されていないんですね。
経済産業省としては、そういうところに焦点を当て、徐々に効率的な投資をしましょうと働きかけています。その中で、場合によっては今ユーザーが自分でサーバを持って使っている形態の部分もダウンサイジングし、自分たちの根幹に関わることだから自前で作って競争の源泉にしようという部分だけを自前でシステムとして持っておく。それ以外は世の中にあるベストプラクティスを使う形にするようにする。
そうすることで、おそらくデータセンターの使い方も変わってきて、預けるという形態が減ります。そうするとデータセンター事業者も何をすべきかを考えるようになります。そういったいろいろなパズルが動き始めると思うのですが、まだ日本ではそのムーブメントは今後のこととなると思います。
また、データセンター事業者においても、詳細にわたってどのくらいのコストで運用しているかをきちんと把握しているケースが少ないということも課題の1つです。そもそも問題として認識されないところに手は打たれないので、こういうところに着目すべきというムーブメントを起こさない限り、世の中の目も変わってこないと思っています。
また、データセンターの難しさの1つに、データセンター自身が工場などと比較すると多くの雇用を生む産業ではないということが挙げられます。そのため、地方自治体からみたときに、雇用を生むような促進、政策はいろいろあるのですが、雇用を生む人数の要件から合致しにくいといったネックはあります。地方自治体から見ても、データセンターを呼ぶときに、地域にどのようなメリットがあるのだろうというところを示していかないと大きく変わらない気もします。
津田 データセンターの地方分散化というのは、社会的にも政策的にも明らかにひとつのテーマであるし、また現在の首都圏への集中化がもたらすリスクを回避するのは重要なことですね。それは共有しましたので、これからいくつかのアクションをしたいと思います。先ほどの仮説をもう少し明らかにして、来年の春には報告できればと思います。