大手企業での知的交配研修
こうした知的交配の事例は、大手企業研修においても急速に広がっている。 これまで研修と言えば、同じ会社の人材同士で受講するのが普通であった。しかし、同じ環境で仕事をする者同士がディスカッションしても、似通ったアイデアしか出てこない。
そこで、あえて業界の違う会社と組んで、コラボ型の研修を実施するということがトレンドになりつつあるのだ。われわれも10年以上前からこうした研修を多数の企業に導入する支援を行い、高い評価を頂いている。
具体的な研修の流れを見てみよう。 例えば、コンビニ企業とゲーム企業で研修を行ったとする。コンビニ企業からみると、ゲーム好きというセグメントの会員100万人にリーチできるというのは大きい。全国に散らばるそうした会員を巻き込んで、リアル店舗でイベント企画をやれば、大きなブームを作ることが可能になるんじゃないかと予測ができる。
ゲーム会社から見ても同様だ。ウェブに強いゲーム会社から見ると、全国のどんな町中にもあるリアル店舗を使えるというのは大きい。この店舗を使った、今までにできなかったいろいろな企画が可能になる。

利益追求よりも壁を超えることが目的
こうした発想をぶつけ合いながら、それぞれの立場から、実現可能性を探り合う。こうした法律があり、それはできないとか、こうした傾向があるのでこのカスタマーはそういう行動をとらないなど……。相手がもつ専門的な知見が、机上の空論に磨きをかける手伝いをする。
しかし、できるだけ思考の壁は低くする。そのあと実際に取り組むとなったら、「利益配分はどうするか」「権利はどちらのものか」といった重い課題が見えてくる。そういう話が出過ぎるととたんに話が進まなくなってしまう。 「これはただの人材育成研修です。社長には研修を通して今までにないものを出すことが前提ですと、御許可をいただいております」 ――こうしたファシリテーションを通して、ああ、それならいろんな発想を出していいんだという空気感を作っていく。