変化が必要と認めるガッツが必要--大変革に乗り出したNokia

末岡洋子

2015-08-28 07:30

 創業150周年を迎えたNokiaが大胆な改革を進めている。携帯電話事業を売却したのが2014年春、今年に入り競合Alcatel-Lucentの買収計画を発表して市場を驚かせた。事業の柱とする無線インフラ部分を強化するものだが、この分野では市場の成長の鈍化と通信事業者を取り巻く厳しい状況にある。買収の目的はなにか、通信事業分野の課題と機会はなにか。Nokiaでグローバル事業戦略担当バイスプレジデントのKathrin Buvac氏に話を聞いた。

 携帯電話で知られてきたNokiaは2014年にデバイスとサービスをMicrosoftに売却、その後ネットワークインフラの「Networks」、地図ナビゲーション・位置情報の「HERE」、先進技術の開発とIPライセンスの「Technologies」の3つの柱で新たなスタートを切った。その後、2015年4月にAlcatel-Lucentを156億ユーロで買収する計画を発表、8月にはHEREをドイツの自動車メーカー連合に28億ユーロで売却することを発表した。その間、Technologiesは2014年末にNokiaブランドを冠した「N1」タブレットをFoxconnが製造・販売することを発表、7月末にはVR(バーチャルリアリティー)カメラ「Ozo」を発表している。

 主軸となるNetworksではこれまで、2007年にSiemensと立ち上げた合弁会社Nokia Siemens Networksを2013年に完全子会社化した。その間にもMotorolaより無線インフラ技術の一部を買収(2011年)、パナソニックのパナソニックシステムネットワークス(PSN)より無線ネットワーク事業を取得(2014年)している。

――Alcatel-Lucentの買収を発表した。再びの大型買収となるが、Nokia、そしてNokiaの顧客へのメリットはなにか?

Nokia グローバル事業戦略担当バイスプレジデントのKathrin Buvac氏
Nokia グローバル事業戦略担当バイスプレジデントのKathrin Buvac氏

 いくつかある。まずはスコープの拡大だ。Nokiaは無線、コアネットワーク、サービスなどを持つモバイルブロードバンドスペシャリストを目指している。スコープという点で、われわれが持っていないIPルーティングを埋める必要があると感じた。

 (顧客である)通信事業者はモバイルと固定が融合した世界に進んでいる。動画と音声が融合しつつあり、固定、モバイル、インターネット、音声の”クアッドプレイ”のサポートができるパートナーを求めている。通信事業者は10年後を見据えてエンドツーエンドで自社のネットワークを設計しており、ネットワークの中心となるIPルーティングなしには、ニッチプレイヤーとなり、大手の事業者と話しができない。

 Alcatel-Lucentはこの分野のポートフォリオを持っている。また、同社のIPトランスポート層、マイクロ波、固定アクセスなどの技術はNokiaにはないもので、これらを利用してIMS(IP Multimedia Subsystem)やモバイルパケットコアなどを強化、補完できる。買収により誕生する企業は、無線、コアネットワーク、IPルーティング、サービス、固定と通信事業者が必要とするバリューチェーンを擁するベンダーになる。市場でもユニークな存在となる。たとえば、競合のEricssonはIPルーティングでAlcatel-Lucentほどの深い製品ポートフォリオを持っていない。

 次の理由として、スケールをあげたい。無線技術ではスケールが重要だ。Alcatel-Lucentは北米市場に強く、Nokiaは欧州で強いし、アジア太平洋ではLTEベンダーとしてナンバーワンだ。合体する企業はLTE無線で世界ナンバーワンのベンダーとなる。


NokiaとAlcatel-Lucentの合体企業により、LTEではトップベンダーに

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