IBMのIaaS「SoftLayer」とPaaS「Bluemix」のユーザーコミュニティは、技術カンファレンスとして「SoftLayer Bluemix Summit 2015」を9月2日に東京・渋谷で開催した。今年2回目を迎えた、Bluemixを基盤にアプリケーションを開発するコンテスト「IBM Bluemix Challenge 2015」の一般部門で最優秀賞を受賞したのは、コンピュータと対話して旅行プランを作るアプリ「またたび」を開発したCTC Cloud Clubだった。

「またたび」の画面。利用者の性格なども加味した上で旅行プランを立ててくれる
今回のBluemix Challengeで分かったアプリケーション開発のトレンドや課題について、審査員を務めた日本IBMのクラウド事業統括執行役員の小池宏幸氏、日立製作所研究開発グループのOSSエバンジェリストである杉田由美子氏、伊藤忠テクノソリューションズクラウドでセキュリティ技術開発を担う小岩井裕氏、Publickeyの新野淳一氏に話を聞いた。
日本IBMのクラウド事業統括執行役員の小池宏幸氏
小池氏は、個人もしくはチームが「できるだけ多くのAPIを組み合わせてより複雑なアプリケーションをつくる」ことをテーマとして設定したと話す。一般から426件、学生121件の応募があった。この1年の技術の流れもあり、WatsonやIoTを意識した作品が多かったという。
一般部門で最優秀賞を獲得したまたたびは、観光地をはじめとしたさまざまなデータを、Watsonや機械学習の機能を使って横断的に分析し、ユーザー好みの旅行プランを作成してくれるというもの。
伊藤忠テクノソリューションズクラウドでセキュリティ技術開発を担う小岩井裕氏
地域や期間別の指定はもちろん、「将来よりも今を大切にしたい」「人に指図されるのが嫌い」といった、個人の性格も反映できるのが特徴。新野氏は「バラバラのデータベースを結びつけて分析できるのは便利」と指摘した。導入したアプリケーションの面では「Watsonに英語版しかないのが問題だった」と小岩井氏。これをカバーするために、今回は機械学習環境として、Microsoft AzureとAPI連携してアプリケーションを構築した。
ソーシャルメディアなどと連携を図ることで、通常なら年単位で蓄積する情報をわずか1カ月ほどで収集し、機械学習などの技術を使って満足度の高い旅行プランを作成できる点がBlueMixの魅力であると、CTC Cloud Clubの開発者は振り返る。
Publickeyの新野淳一氏
以前なら非常に難しかったであろうアプリケーションを、ノンプログラミングで手軽に組めてしまう点について、小池氏は「これこそAPIエコノミーの利点」と説明した。
一方で、課題も見えてきたようだ。新野氏は「BlueMixを使えば確かにロジックとサービスは簡単につくれるが、UI(ユーザーインターフェース)はしっかりと作り込まなくてはいけない」と指摘。
エンジニアはこれまで、ロジックに専心し、UIに重きをおかない傾向があったが、今後はアプリケーションの利用者を引きつける魅力的なUIを作る必要が出てくるとする。小岩井氏は「(利用者が魅力的と感じるUIにより)情シスが収益に直結するサービスをつくる必要がある」と話した。
日立製作所研究開発グループのOSSエバンジェリストである杉田由美子氏
このほか、実際にアプリケーションを構築した人の多くから「(140以上に増えた)APIを探すのが大変だった」という声が多く届いたと杉田氏は指摘する。新野氏も「今後、カタログサービスのようなAPIを探す仕組みも必要になってくるかもしれない」と加えた。
来年の展望について聞くと、12月に予定されているWatsonの日本語化というキーワードが挙がった。2016年は、Watsonが持つ本当の意味での力量が見える作品が寄せられそうだ。