本記事では、企業のデータセンターにおけるワークロードの完全な仮想化を目指す際に直面する数々の問題について、VMwareの2人のエンジニアが「VMworld 2015」で議論した内容を交えて解説する。
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仮想化は企業のデータセンターにおける真のイネーブラーとなってきている。サーバの仮想化によってフットプリントの削減とともに、消費電力の削減を含む物理サーバの効率的使用によるコストダウンが実現される。また、アプリケーションの開発や配備にかかる期間も短縮できる。
仮想化はクラウドコンピューティングの土台となるものだ。そして企業や組織は、自らのデータセンター全体をクラウドベースに移行し、100%の仮想化という目標を達成しなければならないと考えている。
8月から9月にかけて開催された「VMworld 2015」では、VMwareの2人のエンジニアが100%の仮想化を達成する難しさについて議論していた。本記事では、彼らが語った内容についても言及する。
技術面以外の要素
データセンターにおけるワークロードの100%を仮想化するという目標を阻む技術面の課題に入る前に、技術面以外の課題について述べておく必要がある。ちなみに、この種の話題はVMworld 2015のセッションでは語られていなかった。
一部のワークロードの仮想化は、ソフトウェアのライセンスコストが跳ね上がるといった企業運営上の理由で見送らざるを得なくなる場合がある。例を挙げると、企業向けソフトウェアのなかには、仮想化環境におけるクラスタ内のソケット数に基づいてライセンス料金を決定するものもある。このため、32のノードからなるクラスタで、各ノードに4つのソケットを用意する必要がある場合、128ソケット分のライセンス料金が発生する。
また、技術面以外の課題として、ワークロードのサイズからくる制約もある。あるアプリケーションによって要求されるコンピュートリソースが、組織内にある最大のVMホストのそれに匹敵しているのであれば、当該アプリケーションの仮想化はコスト面で見合わないものとなるはずだ。例えば、96GバイトのRAM容量を必要とする巨大なデータベースサーバがあり、組織内にある最大のVMホストの物理RAM容量が96Gバイトというケースだ。仮想化のメリットが、ワークロードのオーバーヘッドに見合うハイパーバイザの追加コストを上回ることはないのだ。
技術面以外の最後の課題として、ミッションクリティカルなアプリケーションを取り巻く政治的な問題もある。仮想化が一般化しつつある今日のような状況であっても、一部の人々はミッションクリティカルなアプリケーションはベアメタルハードウェアに配備しなければならないと考えている。