避けることはできない--Google Carで浮かび上がるロボットカー社会への疑問

三国大洋

2015-10-08 07:00

 「ロボットタクシー(株)が藤沢市(神奈川県)で運行実験を来年から始める」というニュースが先週後半に比較的多くの米国の媒体でも採り上げられていた(※1)。IT関連で日本勢の「先を期待させる動き」がこれだけ注目を集めるのは近年では珍しい(各社の経営不振やリストラ、会計操作などが話題になったことはもちろんある)が、同時に米国を中心とする英語圏でも、この分野に対する関心がそれだけ高いことを示すものとも思える。

 The Wall Street Journal(WSJ)記事に依拠した比較的簡単な内容のものが目立つ中でEngadgetやArs Technica UKあたりが、このニュースの背景にある要因のひとつとして日本の超高齢化問題に触れていた点も目を惹いた。

 高齢化問題というのは、一人っ子政策の影響で人口動態に歪みが出ている中国だけでなく、ベビーブーマーの直面する「親の介護問題」がぼちぼち話題になりつつある米国などにも存在するはずで、そうだとするともっと多くの記事で、下記の動画(ロボットタクシーがYouTubeにあげているもの)が紹介されていてもいいようにも思ったが…。

 一方、米国では先週前半にGoogleが一部の報道関係者を招いてロボットカーに関する現状報告会兼試乗会を開き、これに呼ばれた記者や編集者がまとめた記事がいくつかの媒体で公開されていた(※2)。「Google Car事業の責任者にスカウトされたJohn Krafcik(元Hyundai Americaの最高経営責任者=CEO)がさっそく挨拶に立っていた」「Sergey Brin(Google共同創業者)も顔を出していた」など各媒体の記事にはいくつか目を惹く小ネタも交じっているが、全体としては特に目新しい点も見当たらない。

 ただ、そうした中で「ロボットカーはウェブやiPhoneに匹敵するもの」「未来に触れていることが実感できる稀有な存在」などとするBuzzFeedのMat Honanがまとめた試乗レポートはちょっと異色なものだった。

「乗れば実感」できるロボットカーの不可避性

 HonanはWIREDでいくつか大きな注目を集める記事を書き、その後飛ぶ鳥落とす勢いの媒体であるBuzzFeedが設けたシリコンバレー/ベイエリア支局長として引き抜かれた編集者だが、そんなHonanは自分のキャリアを踏まえてまず次のように記している。

テクノロジ分野の話題を長い間追いかけていると、たまに「本当に革新的なもの」と出会うことがある。その昔、初めてウェブにアクセスした時も、2007年にiPhoneに触れた時も、2013年にOculus Rift(VRヘッドギア)を試した時も、「これが未来の姿だ」といった実感がしたが、それと同じような印象をGoogle Carからも受けた。

 そんな書き出しに続けて、「ロボットカーに対してはたくさんの懐疑的な意見もあるが(略)、読者の皆さんも次のことだけは知っておくべきだ。つまり、ロボットカーが実現すること、必ずそうなること、止めようとしても無駄であることをだ」とHonanは記している。

 この記事には「Google Car(例の丸っこい車体のもの)の乗り心地は『遊園地の乗り物みたい』とか「今の姿の自動車が大好きなオーストラリア人のレポーターが『Googleの目標は(人間の)ドライバー抜きの未来を実現することなのか』などと、Sergey Brinにけんか腰で質問していた」などといった一節もあるが、いずれも紹介するほどのネタではない。

 この記事で紹介に値するのは、Honanが列記している疑問点の方だ。

 「ロボットカーが大々的に普及し、それで社会のあり方が変貌するのは避けられない」との前提で、「そうなる前になるべく答えを知っておきたい疑問」としてHonanは次のような点を挙げている。

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