本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、アクセンチュアの江川昌史 代表取締役社長と、NECの山片茂樹 情報・メディアプロセッシング研究所長の発言を紹介する。
「日本企業が抱える人手不足の課題をBPOやデジタルの力で解消したい」 (アクセンチュア 江川昌史 代表取締役社長)
アクセンチュア 江川昌史 代表取締役社長
アクセンチュアが先ごろ、9月1日から同社の新年度がスタートしたのに伴い、今後の事業方針などについて説明する記者会見を開いた。新社長に就任した江川氏の冒頭の発言は、その会見で自らが最も注目している点について語ったものである。
会見では江川氏をはじめ、社長から取締役会長に就任した程近智氏や各事業部門を率いる幹部も登壇し、それぞれに方針を語った。会見全体の内容については関連記事を参照いただくとして、ここでは江川氏の「人手不足」をめぐる発言に注目したい。
同氏によると、グローバルな人材サービス会社の調査では日本企業の83%が人手不足に悩んでおり、この割合は調査対象の42カ国でもダントツの高さだという。では、どうすれば人手不足を解消できるのか。同氏はそのキーワードとして「BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)」と「デジタル」の2つを挙げ、アクセンチュアの取り組みと合わせて次のように説明した。
まず、BPOについては「お客様の業務をアクセンチュアが請け負い、その業務自体の改善に加えて、組織の変革までもお手伝いするサービス」と説明。その範囲はこれまで経理や人事といった定型業務が中心だったが、最近になってマーケティングやサプライチェーン、そしてさまざまな分野のアナリティクス(分析)といった非定型業務にも広がっているとし、さらに「最近では人手不足を補うためにBPOを適用するケースが増えてきた」と語った。
また、デジタルについては「モバイルやアナリティクス、クラウド、IoT(Internet of Things)ソリューションなどを活用すること」と説明。例えば、IoTソリューションによって機械が人の作業を代替する局面がさまさまな分野で見られるようになるだろうとし、それが人手不足の解消に貢献するとの見解を示した。
さらにIoTソリューションについては、「適用すれば、人はよりクリエイティブで付加価値の高い仕事に専念できるようになる。そして、思ってもみなかった組織同士が業界、国境、規模などの既存の垣根を越えて協業して、今までになかったサービスや産業さえも生み出していく可能性がある」との期待感を示した。