民間業者に委託する場合
ITベンダーが提供するマイナンバー管理サービスは、その多くがクラウドサービスでマイナンバーの保管を主な委託業務として請け負う形態になっています。そのため、中小企業がマイナンバーを事業所内に持つ必要がないことが大きなメリットとなります。
クラウドの利点を活かして、従業員や支払先のマイナンバーを本人が入力する仕組みを提供するサービスもあり、本人がスマートフォンなどからマイナンバーを入力することで収集が完結すること、これもメリットといえます。本人の入力が難しいケースも想定して、マイナンバーの収集代行を行う業者もあります。
こうしたマイナンバー管理サービスを利用する場合の課題は、マイナンバーの利用・提出がスムーズかという点です。
マイナンバー管理サービスを提供するITベンダーでは、同じベンダーが提供する年末調整などのソフトを利用すれば、そのままマイナンバーを記載した源泉徴収票や支払調書が作成できるとしているものが多いのが現状です。
しかし、中小企業がすでに利用しているソフトでマイナンバーを記載した源泉徴収票などを作成する場合、いったんITベンダーのクラウドサービスに保管したマイナンバーをCSVなどに出力して、自らが利用しているソフトに入力しなければならないなど、せっかくのマイナンバーを持たずに済む管理が利用シーンで崩れてしまいます。このため、利用や提出シーンでは内部で対応する場合と同様の安全管理措置が必要となるので要注意です。
これらのマイナンバー管理サービスは、中堅以上の企業をメインターゲットとして提供されていることから、サービス利用料金が中小企業にとって高く感じられると考えられます。サービスを利用することで実現する中小企業の負荷軽減に利用料金が見合うものになっているのか、これも確認しておくべき点です。
今回は、マイナンバーの取り扱いを中小企業が内部で対応する場合の安全管理措置および外部委託する場合の選択肢についてみてきました。次回は、この外部委託の2つの選択肢について、実際のシステムやサービスがどのようなものなのかなど詳細をみていきたいと思います。
- 中尾健一 アカウンティング・サース・ジャパン 取締役マイナンバーエバンジェリスト 1982年日本デジタル研究所 (JDL) 入社。日本の会計事務所のコンピュータ化を30年以上にわたりソフトウェア企画面から支えてきた。2009年、税理士のためのクラウド税務・会計・給与システムを企画・開発・運営するアカウンティング・サース・ジャパンに創業メンバーとして参画、取締役に就任。マイナンバーエバンジェリストとして、主にマイナンバー制度が中小企業に与える影響や具体的対応策に関して解説する。