多くの中小企業で、マイナンバー対策として何をどのようにすれば良いのか理解が進まないまま準備が整わずにいるのではないでしょうか。一方で、システムやセキュリティ機器、シュレッダーなどのマイナンバー関連ツールの商戦が活発になってきています。
中小企業のマイナンバー対策として、システムも含めこれらのツールを整備して内部でマイナンバーに対応するのか、あるいはマイナンバーの取り扱いを外部委託するのか――。今回は内部対応か外部委託かという観点から中小企業のマイナンバー対策を考えます。
内部での対応
中小企業がマイナンバーの取り扱いについて、内部で対応するか、外部に委託するか。どちらの方法を採用するにしても、まず、マイナンバー取扱責任者や担当者を決める組織的な安全管理措置、担当者などにマイナンバー制度や取り扱いなどについて教育を施す人的な安全管理措置をとったうえで、マイナンバーの取り扱い方法を決めていくことになります。
中小企業がマイナンバーの収集や保管(廃棄も含む)、利用、提出といったマイナンバー取り扱いのすべてのプロセスを自社で担う場合、どのような方法で対応するのが良いのでしょうか。
中小企業でマイナンバーを取り扱わなければならない業務を再度整理してみましょう。それは、従業員の源泉徴収票作成や支払先が個人の場合の「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」や「不動産の使用料等の支払調書作成」など税の分野と、従業員の雇用保険、健康保険、厚生年金保険に係る諸手続きなど社会保障の分野の業務ということになります。
これらの業務を自社で処理している場合、従来どのような方法で実施していたのかを見ると、紙に手書きで作成しているケースもあれば、PCに給与計算などのソフトを導入して処理していたケースもあります。
マイナンバーを紙ベースで対応する
中小企業でも従業員数が少ないほど、給与計算および年末調整などの源泉所得税に係る業務まで、手書きで実施していたケースがまだまだ見受けられます。一方、この規模の企業では、給与計算は自社で手書きで実施し、年末調整は税理士に委託するケースも多く見られます(このケースについては外部委託の項でみていきます)。
前回取り上げた紙ベースでマイナンバーの取得、保管ツールが売れている背景には、このようにマイナンバーの記載が義務づけられる書類も手書きで処理している中小企業が多いことがうかがえます。
・収集・提出など受け渡し時の安全管理措置
マイナンバー取り扱いの全体のプロセスを紙ベースで処理する場合は、従業員や支払先から企業へ、企業から行政機関へ紙ベースでマイナンバーが受け渡されることになり、その際の紛失や漏えいリスクに備えた安全管理措置をとる必要があります。
・保管時の安全管理措置
また、マイナンバーが記載された紙の書類を保管することになりますので、鍵のかかる書棚などに施錠保管することはもちろんですが、鍵を厳重管理し、鍵を使ってマイナンバーが記載された書類を取り出した履歴などはきちんと記録しておくことが大事です。
・利用時の安全管理措置
実際にマイナンバーの記載が義務づけられた書類の作成時には、従業員などのマイナンバーが記載された収集時の書類から、源泉徴収票などにマイナンバーを転記する作業が発生します。
マイナンバー記載の書類を複数ならべて作業することになり、責任者や担当者以外の従業員が、マイナンバーに係る作業をしている事務スペースに立ち入らないようにする必要があります。また、マイナンバー記載の書類を机の上に置いたまま席を立たないなどの安全管理措置への配慮が必要となります。