業績回復に向けて苦戦しているAdvanced Micro Devices(AMD)に関する良い知らせと悪い知らせがある。良い知らせは、次世代マイクロアーキテクチャ「Zen」がテープアウトしたというものだ。そして悪い知らせは、2015年第3四半期の決算で損失が拡大したというものだ。売上高は前年同期比26%減の10億6000万ドルとなり、6500万ドルに及ぶAccelerated Processing Unit(APU)の在庫を償却した後の純損失は1億9700万ドルとなった(関連記事:AMD、第3四半期は26%の減収--南通富士通微電子との合弁事業も発表)。
では、次にどういったことが起こるのだろうか?Zenアーキテクチャを搭載したチップの市場投入が間に合い、十分な売れ行きとなり、同社の業績を回復させるのだろうか?それとも、白馬の騎士が到来し、同社を救うのだろうか?その場合、それは果たしてAppleなのだろうか?
PC市場全体で見た場合、AMDがIntelの後塵を拝しているのは疑いのない事実だ。Intelは「Core i」シリーズと「Intel Xeon」プロセッサでハイエンド市場とサーバ市場を、「Atom」ベースのプロセッサ(ブランド自体は「Pentium」と「Celeron」)でローエンド市場を支配している。AMDはグラフィックス性能で負けてはいないものの、販売実績に結びつけられずにいる。
AMDの最新の決算発表では残酷な事実が浮き彫りにされている。コンピューティングおよびグラフィックス部門(デスクトップPCとノートPCのCPUとGPUを取り扱う部門)の売上高は前年同期比45%減となるわずか4億2400万ドルであり、1億8100万ドルの営業損失を計上している。一方、組み込みチップおよびSystem on a Chip(SoC)部門は8400万ドルの営業利益を計上している。これは同社のSoCがソニーの「PlayStation 4」やMicrosoftの「Xbox One」といったゲームコンソールで採用されているためだ。
このためAMDは、開発コード名「Zen」という第7世代CPUの設計に際し、チップの設計者に対して好きなようにしてよいというお墨付きを与えた。同社のプレジデント兼最高経営責任者(CEO)Lisa Su氏によると、Zenは同時マルチスレッディング(SMT)機能によって1クロック当たり40%も多くの命令を処理できるようになるという。また、デスクトップPC向けのプロセッサには最大8つのコアと専用のGPUが搭載され、サーバ向けとして16コアと、おそらくは32コアの製品も投入予定となっている。