10月25日に米サンフランシスコで開幕した「Oracle Open World 2015」(OOW 2015)、同日600キロ離れたラスベガスではIBMもカンファレンスの初日を迎えた。
「Oracle Open World 2015」
Oracleは以前からIBMと激しく競合してきたが、今年のOOWでは仲間が加わった――IBMがx86サーバ事業をLenovoに売却後、関係が変わったIntelだ。Intelの最高経営責任者(CEO)、Brian Krzanich氏はこの日、Larry Ellison氏の前に基調講演の壇上に立ち、共同でIBMからのマイグレーションを奨励するサービスなどを発表した。
クラウドは業界の一大トピックだ。Krzanich氏のスピーチも、Intelのクラウドの取り組みが中心となった。
IntelのCEO、Brian Krzanich氏
Intelのエンタープライズ向けクラウドソリューションは4つの要素にフォーカスする。1つめは「Easy」で、クラウド技術の受け入れを容易にできることだ。2つ目は「Perform」で、クラウドに移行するにあたって性能のメリットが必要だという。3つ目は「Compelling」で、単にデータを収集するだけではなく次のアクションにつながる洞察が得られる魅力が必要だ。4つ目は「Secure」――セキュリティだ。
IntelとOracleの最初の発表は、1と2に関係する。まずは、Easyから見てみよう。
なぜエンタープライズ領域ではクラウドを受け入れるのに時間がかかっているのか? レガシー環境からの移行は簡単ではないからだ。
「現在クラウドソフトウェアは分断化されており、さらに標準ベースではないレガシーインフラ上のプロプライエタリソリューションがクラウドへのマイグレーションを難しい課題としている。複雑性を排除する必要がある」とKrzanich氏。そこでIntelは「Cloud for All」イニシアティブを発表、クラウドを容易に実装することを目的にハイパースケール級のIT効率化をもたらすとのことだ。
具体的な展開としては、ソフトウェア定義インフラの実装を促進するエコシステムの構築として、「OpenStack Innovation Center」を構築した。数千規模のノードがあり、実装のテストやスケールが可能という。
また、ソフトウェア定義インフラをクラウド上のさまざまなワークロードに合わせて最適化する。これにより、これまでの業務アプリケーションとクラウドネイティヴのアプリケーションが同じような環境と性能で動くことが可能になるという。
合わせて業界と手を組み、クラウド実装の加速も進める。この下で同日、IntelとOracleはOracleのパブリッククラウド上でエンタープライズ級の信頼性と可用性を提供するための「Project Apollo」を発表した。Oracleのデータセンターのスケールバージョンで、ハードウェアとソフトウェア最適化の土台となる。
Intelのソフトウェア&サービス担当バイスプレジデントDoug Fischer氏によると、2社からそれぞれ専門家が集まってIntel Xeon CPUとOracleソフトウェアで協業した結果、ワークロードの性能は最大50%アップし、性能予測性は10倍も改善したという。これにより、高い予測に基づく品質保証が可能という。
2の性能は、OracleのExadataの得意とするところだ。ここで2つ目の発表となり、OracleのCEO、Mark Hurd氏と共同で、Oracleアプリケーションを動かす基盤をIBMからIntelベースのOracle Engineered Systemへマイグレーションを促進するプログラム「Exa Your Power」を発表した。
一定条件を満たす顧客向けに無料で提供するProof of Concept(PoC)プログラムで、顧客の環境を評価し、データベースマイグレーションについてのレポートを作成して、移行により得られるメリットを示すという。
OracleのCEO、Mark Hurd氏
OracleのHurd氏は、「数千人の顧客がIBMからOracleに移行した」と胸を張る。Exadataにマイグレーションすることで、財務アプリケーションは2~15倍高速化したり、管理とサポートコストが40%削減したりといった利点が報告されているという。
Krzanich氏はOracleとの協業に加えて、Intel 3D Xpointメモリ技術を使う「Optane SSD」「Optane DIMM」などの自社最新技術も紹介した。NANDよりも10倍耐性に優れかつ数千倍高速だとしている。