SAPは、最近バルセロナで開催されたイベントTechEdでもこれらの問題のいくつかに言及したが、Pezzini氏は、2016年にはこのメッセージをアジア太平洋地域の顧客に届けることに力を入れる必要があると述べた。
SAPの製品開発および提供を担当するエグゼクティブボードメンバーであるBernerd Leukert氏は、S/4 HANAの導入が遅れているという意見には異議を唱えた。
同氏は、2015年のリリース以来、1300社もの顧客がS/4 HANAを導入している上、この数字は年末までには2000を超えると予想されており、同社が経験した中ではもっとも導入スピードが速い製品の1つだと述べた。
SAPのアジア太平洋日本地域のプレジデントAdaire Fox-Martin氏は、電子メールで次のように述べている。「S/4 HANAの導入は、リリース以降、世界全体でもこの地域でも、記録的な速さで伸びている・・・市場に出てわずか8カ月で、1300社以上の顧客を獲得している」。この地域の顧客には、タイのDutch Mill、日本のネットワンシステムズとサンゲツ、インドのINOX Leisureなどが含まれる。
Fox-Martin氏は、インドのAsian Paintsも「Simple Finance」とS/4 HANAの利用を始めており、オーストラリアのラ・トローブ大学、タイのSiam City Cement、インドネシアのPT Delami Garment Industries、韓国のCosmaxなどでも使用されていると述べた。
しかしLeukert氏は、エンタープライズ顧客がこの製品に対して持つ可能性がある疑問について、もっと上手に答える必要があることを認めた。最近英国を訪問した際にも、S/4のビジネス上の価値が明確ではないというフィードバックを受けたことに言及しながら、まだ手が届いていないチャンスが眠っていることは明らかだと同氏は述べた。
SAPは2016年に、世界の各都市でS/4 HANAのキャンペーンを行う予定であり、この製品のビジネス上の価値と、顧客の成功事例を紹介するためだけのイベントを開催することから、この問題を解決しようとしているのかもしれない。
Pezzini氏はまた、SAPが成長戦略を明確にする必要があるもう1つの分野としてPaaSを挙げ、HANA Cloud PlatformのPaaSサービスはいまだに「厳重な秘密になっている」と述べた。
「SAPがこの製品をアジア太平洋地域で積極的に売り込むことは、特に自前でシステムを構築する傾向が強い日本やインドなどの国では、開発者の心をつかむために必要不可欠だ」と説明した。これらの地域では、大企業はカスタマイズされたアプリケーションを好む傾向がある。
この点については、Leukert氏はPezzini氏の意見に賛同した。「SAPの技術的な能力は市場で認知されているよりもはるかに高いが、これは、当社のPaaS戦略やその価値、およびそのメリットなどのわかりやすさを、大きく改善できることを意味している」（Leukert氏）
「SAPがほかの企業と違うのは、クラウド市場の多くの企業はウェブ開発環境を提供していないということであり、この環境のサポートをさらに強化していく」と同氏は述べた。「当社はわれわれのアプリとテクノロジ資産をサービスAPIで公開し、HANA Cloud Platformを利用している開発者が、サービスとしてのモバイルであろうと、サービスとしてのEコマースであろうと関係なく、プラットフォーム横断的に恩恵を受けられるようにしたいと考えている。当社はすでにこれらの機能を提供しているが、市場にそれを十分に知らせることについては、取り組みが不足している。この点では、大きな改善のチャンスを感じている」（Leukert氏）
