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松岡功の一言もの申す

独自路線を行くSAPのクラウドサービス拡大戦略

松岡功

2015-12-09 12:00

 SAPがクラウドサービス事業の拡大に向けて独自路線を進みつつある。かねて自前のクラウドにこだわらないことを明言していたが、その展開の仕方が見えてきた。

パートナー企業のクラウドからも利用可能に

 SAPジャパンが先ごろ、データ分析のSaaS「SAP Cloud for Analytics」を国内で提供開始すると発表した。インメモリデータベースをクラウド上で提供するPaaS「SAP HANA Cloud Platform(HCP)」を分析エンジンとして利用し、その上でビジネスインテリジェンス(BI)や経営ダッシュボード、計画、予測などの機能を統合した新規開発商品だという。

 発表会見で説明に立った同社の鈴木正敏バイスプレジデント プラットフォーム事業本部長は、「新規開発と言っても唐突に出てきたわけではなく、HCPの能力をフル活用して仕立て上げたリアルタイム分析ソリューションだ。当社はこれまでオンプレミスのBI市場をリードしてきたが、今回の新サービスでクラウドベースのアナリティクス市場でも引き続きシェアトップを確保したい」と力を込めて語った。


会見に臨むSAPジャパンの鈴木正敏バイスプレジデント プラットフォーム事業本部長(右)と
高橋正樹プラットフォーム事業本部シニアソリューションプリンシパル

 SAP Cloud for Analyticsの詳細な機能や特長については関連記事を参照いただくとして、ここでは鈴木氏とともに説明に立った同社の高橋正樹プラットフォーム事業本部シニアソリューションプリンシパルの次の発言に注目したい。

 「新サービスはHCPを通じて、オンプレミスや他社クラウドのアプリケーションとも幅広くデータ連携を行うことができる。今後はHCPが搭載されていれば、SAPのデータセンターから提供するクラウドでなくても利用できるようにしたい。自前のクラウドにこだわらず、HCPおよびその上で動くアプリケーションをパートナー企業のクラウドからも利用できるようにして、どんどん広げていきたい」

クラウドサービスにおけるビジネスモデルの対決

 高橋氏が語ったHCPおよびその上で動くアプリケーションの展開の仕方は、まさしくSAPならではのクラウドサービスの拡大戦略である。

 実はSAPはかねてより、自社製品のクラウドサービス展開において、自社のデータセンターから提供するだけでなく、グローバルな地域や業種・業態などの特性を踏まえた形で、パートナー企業のデータセンターにもサービスの運営を委託してビジネスを広げていく協業形態をとっている。

 クラウドサービスにおけるパートナー企業との協業については、グローバルレベルでSAPと競合する他のベンダーも同様に注力している。だが、SaaSについては代理販売、PaaSについてもその上で開発したアプリケーションのデータ連携を図る形で、ベースとなるSaaSやPaaSは当のベンダーが自前のクラウドで運営しているケースがほとんどだ。

 そうしたベンダーが自前クラウドにこだわるのは、顧客と直接つながることで、いわゆる直販メリットが得られるからだ。データセンターをはじめとした投資はかかるものの、顧客の囲い込み戦略としては効果絶大とみているわけである。

 では、なぜSAPは自前のクラウドにこだわらないのか。そのキーワードとみられるのが、今回の新サービスの発表会見でも強調されていた「HCP」である。おそらくSAPは、HCPによってPaaS市場で確固たるシェアを獲得することこそが、SaaSも合わせたクラウドサービス事業の最大化につながるとみているのだろう。

 ただ、エンタープライズITのプラットフォームという意味では、オンプレミス市場で圧倒的な存在であるOracleがPaaS市場でもシームレスな利用環境を武器に一大勢力を築こうと狙っている。そうした中で、HCPがどれだけ勢力を伸ばすことができるか。SAPはその最大化を目指して、自前クラウドにこだわらない戦略に打って出たとみられる。

 自前クラウドにこだわるか、こだわらないか。これはクラウドサービスにおけるビジネスモデルの対決である。もしSAPのビジネスモデルが確固たる成果を上げれば、クラウドサービスの流通の仕組みが大きく変わることになりそうだ。

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