(3)コンピューティングリソースの全体最適化
次にIoTシステム構築で特に重要なシステム全体の最適化について示します。IoTシステム全体を最適化するためには、対象となるデータや、アルゴリズムに応じてデータ量と演算、ネットワーク帯域への負荷を意識した特徴量の抽出や、アルゴリズムのチューニング作業が必要となります。IoTシステムを構築する上で、サーバ環境や、クラウド、ウェブ技術とのインテグレーションなども必要になり、最適なIoTシステムの構築には、さまざまな知識や経験が必要です。
生体信号モニタリングシステムにおいて、コンピューティングの最適化を実施した例を図8に示します。この例では、生体信号のモニタリングデバイスからキャプチャされた心拍のデータに対して特徴を抽出し、クラウド上のサーバにて機械学習で健康状態を診断します。
図8:生体信号モニタリングシステムのIoTシステム構築例
この例では、ネットワーク帯域を抑制するため、エッジデバイス側にて特徴量を抽出し、サーバへの送信データ帯域を50分の1(デバイス10万台の場合: 全データ送信は400MB/秒に対し、特徴データのみの場合は8MB/秒だった)に最適化しました(図9)。大幅なネットワーク帯域を低減すると同時に、サーバ側での機械学習処理に必要十分な特徴量を送信できています。
この例では、心拍のピーク値を検出することでQRS値を特徴量としてデータから抽出し、機械学習の一種であるニューラルネットワークを使い、健康状態を診断しています。このように、全体での処理順序、アルゴリズムについて机上検討を実施した後、エッジデバイス側とサーバ側に実装する処理の適切なパーティショニングを行いました。
図9:サーバへの送信データ帯域の最適化