組織内のユーザーインターフェース(User Interface:UI)やユーザー体験(User eXperience:UX)を専門に扱う部署の位置付けはいろいろあり得るが、そこに集めるべき人たちの肩書、職種、担当業務はどんなものだろうか。それぞれどんな技能や素養を持っている人たちだろうか。また、UIやUXの重要性をしっかり理解し、社内に啓蒙し、UIやUXの向上を推進するリーダーたるべき人はどんな肩書を持っているのだろうか。
今回はそこからUI/UX設計部のあり方について考えていきたい。
UIデザイナー
まず、UI/UX設計部に所属する人として最も想像に難くないのは、UIデザイナーと呼ばれる人たちであろう。
前回記事の「UIの設計」で挙げたような項目を担当するような人は全てUIデザイナーと呼べるわけだが、「UIデザイナー」が実際に何を担当している人を指すかは、組織によってまちまちである。
ビジュアルデザインに寄った部分を担当する人を指し、実装寄りの人は「UIエンジニア」と呼ばれるかもしれないし、逆に実装を含む部分を担当する人を指し、ビジュアルデザインの部分はそちらを専門とする「グラフィクスデザイナー」などに任せる形になっているかもしれない。
もちろん、同じ組織内で、カバー範囲の違う複数のタイプの「UIデザイナー」がいても構わない。
どのようなタイプのUIデザイナーだとしても、共通して持っているべきは情報デザインの知識と、基礎的な人間の認知心理/運動に関する知識である。それをベースとして、スマートフォンやウェブなど各種プラットフォームの知識、デザインをUIコンポーネントなどによる実装に落としこむ技能、情報デザイン的要請やその他の要請に沿うようヴィジュアルを整えるセンスなどが加わることで、さまざまなタイプのUIデザイナーが成り立つ。
上述のような知識や技能など以外にも、タッチパネルやマウス、キーボードをはじめとする入力デバイスの特性を把握しておく必要もある。物理的な製品を作る場合には、素材の知識や加工、生産などの知識も必要になる(その場合には「プロダクトデザイナー」や「工業デザイナー」と呼ばれる人たちがいるかもしれない)。
前回も書いたが、UIやUXを扱うのに必要となる知識やスキルは多様かつ雑多なのである。
このようにベース以外の部分は幅が広いが、それぞれに特化したタイプのUIデザイナーも、他の部分に関してある程度は知識を持っておいたほうがよい。カバー範囲の異なるUIデザイナーとチームとして動く際に円滑に進めるためというのもあるが、UIやUXを考える際には全体的な視点を持つことが重要だからである。