ビジネスを変えるITでデジタル化を進める--SAPジャパン事業戦略

藤本和彦 (編集部)

2016-02-04 07:00

 SAPジャパンは2月3日、2016年の事業戦略を発表する記者発表会を開催した。ビジネスアプリケーション群「SAP S/4 HANA」を中核とした“デジタルビジネスフレームワーク”やPaaS「SAP HANA Cloud Platform」の国内展開を本格化すると表明した。

SAPジャパンの福田社長
SAPジャパンの福田社長

 2015年はグローバルで目標を上回る業績を達成した。総売上は前年比10%増の208億1000万ユーロ(約2兆7000億円)。特にクラウド事業が好調で、新規受注が103%増、売り上げが82%増と大きく成長した。クラウドとソフトウェアの売り上げは12%増となった。

 SAPジャパン 代表取締役社長の福田譲氏は、「売り上げ、利益ともに過去最高を更新した。世界経済の減速などさまざまな不確定要素があった中でも、企業はミッションクリティカルな領域に投資していることが鮮明に出た結果だと理解している」と説明した。

 SAPジャパンの業績も堅調だ。売り上げは6%増の6億3600万ユーロ(約830億円)。これは5年連続の増加で4年連続の最高額更新であるという。

 グローバルと同じくクラウド事業が急伸しており、新規受注は193%増。内訳は、「SAP HANA Enterprise Cloud」が218%、「Customer Engagement&Commerce」が396%、「Ariba」が150%、「SuccessFactors」が20%の増加となった。グループ会社であるクラウド型経費精算のConcurについても108%増と急成長を続けていると強調した。

 福田氏は、2015年のハイライトとして、統合基幹業務システム(ERP)の最新版「SAP S/4 HANA Enterprise Management」の提供開始を挙げた。2010年にインメモリデータベース製品として登場したSAP HANAは2015年に5周年を迎え、グローバルでは1万社以上の顧客が導入。S/4 HANAについても、既にグローバルで2700社、日本で70社が採用しているとした。パートナー企業向けの取り組みとなる「SAP S/4 HANAコンソーシアム」は22社が参加している。

支えるITから変えるIT、ビジネス価値の創出へ

 SAPジャパンでは、2016年を「デジタル元年」と位置づけ、日本企業のデジタル化を進めていく。ITはビジネスを支えるものから、シェアードエコノミーやウーバライゼーションなどのように今やビジネスを変えるものへと変貌を遂げつつある。

 「SAPは、長年のパッケージソフトウェア事業によって、25の業種別に実際に駆動するサービス、アプリケーションを持っている。これをどのようにデジタル化にあわせてリニューアルし、提供していくかに注力したい。クラウドで迅速かつ柔軟に実装、連携させ、データドリブンなビジネスプロセスやビジネスモデルに進化させていく。ITをシンプルにすることで、最終的にはビジネス価値の創出に貢献する」(福田氏)

 SAPが考える企業ITのデジタル化は、「デジタルビジネスフレームワーク」として大きく5つのコンポーネントで構成されている。(1)顧客接点のデジタル化、(2)サプライヤー協業のデジタル化、(3)従業員エンゲージメントのデジタル化、(4)モノとコトのデジタル化、(5)デジタルコアとしてのS/4 HANA――である。

デジタルビジネスフレームワーク
デジタルビジネスフレームワークのイメージ図(SAPジャパン提供)

 デジタルコアを囲む4つの領域は主にクラウドでカバーし、コアプロセスについてはクラウド、オンプレミスのいずれでも提供する。IoTに代表されるモノとコトのデジタル化では、さまざまな企業と実証実験を進めている。

 デジタルビジネスフレームワークについても業種別で提供する。グローバルでは既に10件弱のフレームワークを提供しており、日本にも順次展開していく計画だ。

 SAP HANAのPaaS版であるSAP HANA Cloud Platform(HCP)を国内で本格展開する。大企業からスタートアップ企業まで幅広い顧客が低コストで利用できる開発プラットフォームであり、2016年には国内にデータセンターを設ける予定であると福田氏は説明した。

SAP HANA Cloud Platformのイメージ図
SAP HANA Cloud Platformのイメージ図(SAPジャパン提供)

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