日本IBMとソフトバンクは2月18日、「IBM Watson」日本語版の提供を開始した。Watsonを活用してアプリケーションを開発するための6種類のAPIを提供する。
具体的には、意図や意味を理解し、質問が異なる方法でなされた場合でもユーザーが回答を見つけ出す製品やアプリケーションを開発できる「Natural Language Classifier(自然言語分類)」、より自然に会話できるようになる「Dialog(対話)」、機械学習を活用して、情報検索を向上する「Retrieve and Rank(検索、ランク付け)」、PDFやWord、HTMLといった異なるフォーマットのコンテンツをWatsonのサービスで使用できるフォーマットに変換する「Document Conversion(文書変換)」、そして、日本語による「Speech to Text(音声認識)」と「Text to Speech(音声合成)」を提供。日本のパートナーや起業家、アプリケーション開発者はAPIを活用してアプリを開発できる。
日本IBM 代表取締役社長執行役員 ポール与那嶺氏
「日本に里帰り」したWatson
日本IBM代表取締役社長執行役員のポール与那嶺氏は、「2015年2月にソフトバンクと提携を発表してからWatsonの日本語化を一緒に進め、短期間でこれを達成できた。振り返ってみると、Watsonの原点は日本にある。30年前に日本IBMの大和研究所でテキストマイニングの研究開発を開始しており、それが米国に渡り、5年前に米国の人気クイズ番組の“Jeopardy!”で大活躍をした。その後さまざまな業種でも実績が出せるようにしてきた。日本語版の提供開始は、日本に里帰りしたともいえる」と言い表した。
「タイミングもパーフェクト。日本では、IoTやソーシャル、デジタル化の動きに注目が集まっており、データがこれからすごい勢いで拡大することになり、非構造化データを理解できる人は勝ち組になる。非構造化データを理解し、仮説を立てて推論し、推薦、学習するのがWatsonであり、これをコグニティブテクノロジ、コグニティブソリューションと呼ぶ。Watsonは第1弾であり、今後、新たなコグニティブの世界を提案していくことになる」(与那嶺氏)
ソフトバンク 代表取締役社長兼CEO 宮内謙氏
ソフトバンク 代表取締役社長兼最高経営責任者(CEO)の宮内謙氏は、「これだけワクワクした1年間はなかった。そして、これからもっとワクワクすることが起きると考えている。すでに十数社と契約しているが、大企業を中心に150社以上から引き合いが来ている。IT産業に長年いるが、これだけ引き合いが一気に来たのは初めて。ソフトバンクは、あらゆるITを使って、スマート経営を実現することを目指しているが、それに一番フィットしているのがWatsonである」と期待を寄せた。
「社内では、Watsonに関して、6つのプロジェクトが進んでおり、3月から最初のプロジェクトとして社員がスムーズに仕事をできる環境をスタートさせる。その後、営業活動をはじめ、さまざまな現場でWatsonを使うことになる。Pepperは全国2000店舗のソフトバンクショップで導入しているが、これにWatsonを付け加えると、店舗がよりスマートなスタイルに変わる。PepperとWatsonは、右脳と左脳をリンクさせるようなもの。スマホをもっと使いやすくするためにもWatsonが必要になるだろう」(宮内氏)
新たに契約したWatsonに関する30社の販売パートナーのほか、約200社のPepperの販売パートナーを通じた展開も進める。