――Idayは、具体的にどういうフローで進むのか。
Idayは技術に特化した議論をするのではなく、もっと技術上の問題はなんなのか、どのような課題があるのかといった枠組みの中で、課題やチャレンジ、ビジネスチャンスなどのトピックをポストイットに切り貼りして進めていきます。
そしてホワイトボードにいろいろなことを書き込んで、その中から最も導入しやすいもの、最もビジネス価値が高いものを洗い出します。そして最終的に「こういった解があるのではないか」ということをいくつか決めて、2週間くらいかけてPOC(概念実証)を実施し、さらに長期的な展望ではどのような製品やサービスがあるのかなどを考えていきます。
イノベーションにはまったく違った観点で物事を見る人々と一緒に話すことが重要です。Idayにおいても部署やグループが異なる人をひとつにまとめて、違った観点で見れるように仕組んでいます。その結果、クリエイティブな発想が生まれています。
テクノロジをキャッチアップするには新たな能力開発も重要です。われわれは、Microsoftの(拡張現実ヘッドセット)「HoloLens」で作業することもありますが、これは3Dですので、3Dのモデラーも必要になってくるわけです。単にHoloLensに向けてのデベロップメントができればいいというものではなく、例えば自分の背後で扉が閉まったら音の響きはどうなるのか、どんな感じに聞こえるのかということもきちんと想像して、それを具現化できるような能力が必要です。
そういう定義で、このイノベーションが重要視される現代社会においては、一言にITといっても今までとは違ったスキルが必要とされます。
Idayにより北米の金融機関ではビジネスの迅速性を改善するためにビジネスをクラウドに移行するためのプログラムをともに開発したほか、欧州の家電小売業では、オンラインとオフラインが融合したオムニチャネルの設計、モバイル端末から購入したい消費者への対応を手がけました。
現代のCIOに求められる能力
――CTIOや現代のCIOにはどのような能力が求められるか。
今のCIOは、大変難しい課題に直面しています。事業部門は、ITからどのような価値が得られるのかを、今まで以上に追究するようになっています。今までは、バックオフィスのシステムを運用していれば、それでよかったわけです。しかし、もはやそれだけでは十分ではなくなりました。そういった新しい環境に今のCIOは順応していく必要があります。
CIOは2つのキーワードで物事を考えなくてはいけません。SoR(System of Record)とSoE(System of Engagement)で考える場合、SoRの部分は今あるシステムの運用コストをどう削減することができるのかを考えます。よく使われるのがクラウドや「as a Service」であり、それがどんどん台頭しています。
CIOは、あるひとつのプロセスそのものが、その会社にとって真なる価値を与えないものであるなら、最も少額で最も時間をかけずにそれらの業務が展開できるように考えなくてはいけません。また、もう一方のイノベーションの部分(SoE)は、どうすればスピーディにイノベーションを生み出すことができるのかを両輪のように考えなければいけないわけです。