UXから新製品やサービスを考える場合
新規の製品やサービスの企画を最初から練るような段階では、あまり細かな粒度のUXやUIは気にする必要がない、もしくは少ない場合が多い。そこに参加しUXに関する部分をまとめるのは必然的に大きな粒度のUXを専門とするチームや部署の人達である。
そうした企画の場というのはUXに関わる考え方などを広めるためによい場でもあるので、UXを考慮したデザインを実施するだけでなく、そのプロセスを通じて啓蒙ができるような人材を含めて割当てられれば理想的である。そのために特化したチームや部署を構築しておければベターであろう。
ウェブサイト、広報関連媒体などのデザイン
前回も取り上げたように、自社、自組織のウェブサイトのデザインなど、(潜在的なのも含め)ユーザーや顧客に情報を送り届ける部分もUXを重視して設計したいポイントである。
ウェブサイトのデザインには双方向の要素も多く含まれるのでUIの範疇の要素の割合も少なくないが、組織の顔となるウェブサイトであれば、伝わるイメージやメッセージなど全体としてのUXの重要度は特に高い。これも特化したチーム・部署を構築してもよい分野であろう。
同じウェブサイトでも、サービスを提供するためのものであれば、(大きな粒度のUXの考慮がしっかりなされ、それを崩さないよう気をつけた上で)実運用しながらテストをし細かい改良をどんどん加えていくタイプのデザインも有効なので、そちらに特化したチームや部署を用意しておくことも考えられる。
まとめ
細かな粒度から大きな粒度までUXを(もちろんUIも)全体として見ることが重要であり、可能な限りそうありたいが、細かい部分だけを設計、改善するというプロセスも、組織全体の都合や、長期的なUI/UXの改善を考えた場合には決して疎かにはできない。
必要な知識やスキル、専門性の違いもさることながら「どのレベルのUXを見ているのか」を明確にするため、また限られた人的リソースなどを有効に活用するためにも、扱うチームや部署をはっきりさせるのは有効であろう。
ただしもちろん、大きな粒度と細かな粒度のUXのチーム・部署は十分に連携し、必要に応じて同じプロジェクトに両方から参加するということは大前提である。統括する人もしくは部署の下に、明確に切り分けられたチームや部署を設けるという形もよいであろう。
切り分け方は、UI/UXの向上の推進の仕方に関するメッセージ性を持つので、熟慮したい。
組織の規模などの都合で切り分けはできなかったり、兼務、兼任したりする場合もあるだろう。その場合でも、プロジェクトごとに「どのレベルのUXを見ているのか」をはっきりさせつつタスクを遂行することが重要である。
- 綾塚 祐二
- 東京大学大学院理学系研究科情報科学専攻修了。 ソニーコンピュータサイエンス研究所、トヨタIT開発センター、ISID オープンイノベーションラボを経て、現在、株式会社クレスコ、技術研究所副所長。 HCI が専門で、GUI、実世界指向インタフェース、拡張現実感、写真を用いたコミュニケーションなどの研究を行ってきている。