松岡功の一言もの申す

グループウェア市場に参入したクラウドインテグレーターの勝算

松岡功

2016-04-14 12:18

 クラウドインテグレーターの草分けであるテラスカイがグループウェア市場に参入した。その狙いは何か。果たして勝算やいかに。

グループウェアからソーシャルウェアへ


新サービスの発表会見に臨むテラスカイの佐藤秀哉社長

 「既存のグループウェアでは、もはや新しい仕事のやり方に馴染まない。クラウド時代の新しい仕事のやり方にマッチしたグループウェアを提案したい」――テラスカイの佐藤秀哉社長は4月12日、同社が開いた新サービスの発表会見で、グループウェア市場に参入した理由についてこう語った。

 同社が発表した新サービスは、クラウドベースのグループウェア「mitoco(ミトコ)」。社内での情報共有にとどまっていた既存のグループウェアとは一線を画し、ネットワークを介して社外ともコミュニケーションをとれるようにしたのが最大の特長だ。こうした活用範囲の広さから、同社では新サービスを「ソーシャルウェア」と銘打って提供していく考えだ。

 新サービスは、同社が豊富な取り扱い実績を持つSalesforceのクラウド基盤を利用して開発されており、Salesforceが提供する最新の技術や堅牢なセキュリティ機能を利用し続けることができるという。新サービスの詳しい内容については関連記事を参照いただくとして、ここでは佐藤氏の冒頭の発言に込められた思惑に注目したい。

 「パッケージベースの既存のグループウェアは、1990年代から社内での情報共有を図るために広く使われてきた。だが、2000年代に入ってFacebookやTwitterなどのSNSが出現し、企業のビジネス活動にも影響を与えるようになってきた。2010年代になると、その流れから外部ともコミュニケーションをとれる企業内SNSが使われるようになり、既存のグループウェアに取って代わるケースも見受けられるようになってきた」

 こう説明した佐藤氏は、そうした流れの中で既存のグループウェアが進化を遂げていない理由について、情報共有の範囲を社外に広げる発想がなかった点と、それを行うことが技術的にも難しかったという2点を挙げた。(図参照)

なぜ、今新しいグループウェアが必要なのか?(出典:テラスカイの発表資料)
なぜ、今新しいグループウェアが必要なのか?(出典:テラスカイの発表資料)

一段と激しくなるグループウェア市場競争

 新サービスはまさしく、この2点において進化を遂げたものだと、佐藤氏は強調した。ただし、「既存のグループウェアが長年培ってきた社内の情報共有機能と比べると、新サービスは当初、まだ追いつかないところがある。その差はクラウドサービスの利点を生かしてスピーディにバージョンアップして埋めていきたい」とも語った。

 正直なコメントだが、ユーザーから見ると非常に重要な部分なので、例えば現在、国内で最も利用されているサイボウズのグループウェアの機能にどれくらいの期間で追いつけるのかと聞いたところ、同氏は「2年以内には追いつきたい」と答えたうえで、次のような考え方を示した。

 「サイボウズはグループウェアを18年間にわたって開発し続け、社内の情報共有機能におけるノウハウを蓄積してきている。それに追いつくには少々時間がかかるが、一方で長年の蓄積から機能を付加しすぎて複雑になってしまっている部分もあると見ている。したがって、追いつくだけでなくユーザーにとって最も使い勝手がよい機能を見極めて実装していきたい」

 最後に、この分野に詳しいガートナージャパンの志賀嘉津士ガートナーリサーチ バイスプレジデントに、テラスカイの新サービスの印象を聞いたところ、次のようなコメントを寄せてくれた。

 「Salesforce上のグループウェアというところに魅力を感じるユーザーは多いだろう。さまざまな用途の広がりが期待できる。一方で、会見で話題に上ったサイボウズの製品をはじめ、GoogleやMicrosoftのオフィスツールにおけるグループウェア機能もかなり進化してきており、市場競争は一段と激しくなりそうだ。まずはグループウェアとして必須の機能について、競合と遜色のないものに仕立て上げることを急ぐ必要があるだろう」

 佐藤氏によると、新サービスはSalesforce上の企業内SNSである「Chatter」も取り込めるという。まずはSalesforceユーザーに提案しやすいこともあり、勝算は十分にあると見ているようだ。果たして、ソーシャルウェアという新しい概念を広く浸透させることができるかどうか、注目しておきたい。

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