日本IBMは5月11日、同社がクラウド型で提供しているデータ分析サービス群「IBM Cloud Data Services」の最新動向を説明した。直近では、データ活用のためのオープンソースソフトウェア(OSS)をフルマネージド型で提供する「Compose Enterprise」を開始。6月には、ETL(抽出、変換、登録)ツールをクラウドで提供するほか、リレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)の新版「DB2 11.1」を出荷する。
日本IBMは昨今、企業のデータ活用を支援する戦略として「Open for Data」というコンセプトを提唱(図1)。この戦略の下、OSSを積極的に取り込むなど、データ活用の製品技術をオープンなものにする。さらに、活用するデータそのものもオープンにして流通させる。データを所有する企業と連携したサービスを企画するほか、データ流通のマーケットプレイスも運営する。

図1:Open for Dataのコンセプトを支える製品サービスをクラウドで提供する。黄色で示した製品は直近の1~2カ月にアップデートしたもの

日本IBM 執行役員 IBMアナリティクス事業部長 三浦美穂氏
会見では、日本IBMの執行役員でIBMアナリティクス事業部長の三浦美穂氏と、IBMアナリティクス事業部セールスエンジニアの田中裕一氏が、Open for Dataのコンセプトを支える製品として、ここ半年の間にアップデートした新製品をいくつか紹介した。田中氏は「データは次の世代の天然資源」と表現し、データを簡単に活用できるようにするクラウドサービスの重要性を説いた。
ETLツールもクラウドで提供--OSSのNoSQLも充実させる
近い将来の話は2つある。1つは、データを変換してデータベースに登録するETLツールの「DataStage」について、これをクラウド型で提供する「DataStage on Cloud」を6月10日に開始する。もう1つは、DB2 11.1を6月15日に出荷する。

日本IBM IBMアナリティクス事業部 セールスエンジニア 田中裕一氏
ここ1~2カ月の直近で出荷した製品は2つある。1つは、クラウド型で提供しているデータウェアハウス(DWH)用途のRDBMSである「dashDB」について、高負荷なトランザクション処理用途で利用するためのバージョン「dashDB Transactional」を追加した。もう1つは、データを活用するためのOSSをフルマネージド型でクラウドで提供するCompose Enterpriseを開始した。
Compose Enterpriseに含まれるOSSの例として、NoSQLの「MongoDB」「Redis」「RethinkDB」、RDBMSの「PostgreSQL」、メッセージ通信の「RabbitMQ」、検索エンジンの「Elasticsearch」などがある。これらのソフトを活用することで例えばHadoopに蓄積したビッグデータを各種の方法でアクセスできるようになる(図2)。
ここ1~2カ月の話題としては、モノのインターネット(IoT)デバイスのデータを収集するためのソフト「Quarks」をOSSとして公開した。IoTデバイスに導入するJavaランタイムなどを提供する。ネットワーク通信やデータ転送などの基本的な機能を提供するもので、ストリームデータ処理ソフト「IBM Streams」の機能の一部を外出ししたものだ。

図2:NoSQLやメッセージ通信などデータアクセスの手段をOSSで拡充する