冒頭の発言はこのコメントのエッセンスである。果たして思惑通り進めることができるか。新野氏の経営手腕に注目しておきたい。
「これからのビジネスは“顧客体験”を中心に推進すべきだ」 (アドビシステムズ 佐分利ユージン 代表取締役社長)
アドビシステムズ 佐分利ユージン 代表取締役社長
アドビシステムズが先ごろ、デジタルマーケティングソリューション「Adobe Marketing Cloud」の最新情報や顧客事例を紹介するプライベートイベント「Adobe Marketing Cloud Customer Experience Forum 2016」を都内で開催した。佐分利氏の冒頭の発言はその基調講演で、“顧客体験”(カスタマーエクスペリエンス)の重要性を強調したものである。
佐分利氏は講演で、「最近になって多くの企業が顧客体験に注目するようになってきた」とし、「優れた顧客体験は魅力的なコンテンツに始まる」と切り出した。そして「魅力的なコンテンツ」について次のように説明した。
「コンテンツはさまざまな種類があるが、魅力的なコンテンツに欠かせないのがビジュアルだ。それは美しいデザインやクリエイティブな表現によって、消費者を感動させ、行動に駆り立てるものだと、私たちは考えている。とりわけ、デジタルなビジュアルによる顧客体験はPCやスマートフォンだけでなく、デジタルサイネージなどさまざまな形態で提供できるようになってきており、それらを消費活動にうまくつなげることが求められている」
佐分利氏によると、まさしくそうしたソリューションを提供しているのがアドビだという。具体的には今回のイベントのテーマであるMarketing Cloudとともに、クリエイティブなデザインやコンテンツ制作に向けた「Creative Cloud」、ドキュメント業務を効率化する「Document Cloud」といった3つのクラウドサービスを展開している。(図参照)
アドビが提供する3つのクラウドサービス
佐分利氏が言うように、顧客体験は今やビジネスの重要なキーワードになっている。この分野でリードしているIT企業といえば、多くの人がアップルとともにアドビを思い浮かべるだろう。同氏も「アドビとしてはデジタルな顧客体験によって、顧客企業の収益拡大や顧客満足度向上を強力に支援していきたい」と力を込めて語った。
ただ、デザイナーやクリエイターには大きな支持を得ているアドビだが、ビジネス分野へ深く入り込んでいくのがこれからの課題といえる。果たして追い風に乗れるかどうか、注目しておきたい。