脳の神経細胞(ニューロン)
脳を構成する細胞は、神経細胞(ニューロン)とグリア細胞の2種類であるが、このうち脳の信号伝達に主に寄与するのは神経細胞である(グリア細胞は脳の代謝や免疫系などの生存に最低限必要な役割を果たす)。神経細胞は、図1に示されるような特徴的な細胞であり、外見的に「細胞体」「樹状突起」「軸索」に分けられる。

図1
細胞の中心部が「細胞体」である(ここに細胞核やミトコンドリアなどの主要器官が含まれる)。細胞体から一定の太さで長く伸びる一本の突起を「軸索」と言い、ここから電気信号を放出する。すなわち、軸索は神経細胞の「送信側」の役割を果たす。軸索の先端には「シナプス」と呼ばれる膨らみがあり、これが他の神経細胞と結合し、他の神経細胞へ電気信号を伝達している。シナプスから伝達された信号を「受信」する役割を果たすのが「樹状突起」である。
神経細胞(ニューロン)の以上の様子から、神経細胞は、単純に表現すると「(周囲の神経細胞から)信号を受け取って、それをまた(隣接する神経細胞に)送信する」という働きを持っていると言える。この様子を模式的に示したものが図2であり、周囲から信号を受け取ると「バースト発火」という電圧の高い状態と低い状態を繰り返し(発火)、再び低い状態に戻る(非発火)、というサイクルを繰り返していることがわかる。

図2
ニューラルネットワーク
神経細胞(ニューロン)は、以上のように、複雑な形状ではあるが、単純に考えると、「周囲から信号を受け取って発火し、周囲に信号を渡して発火を終える」という、ON/OFFを繰り返す「電球」のようなものであると考えることもできる。
神経細胞(ニューロン)のこの性質に着目し、神経細胞を、0か1のいずれかの値を取るものとして、モデル化(アルゴリズム化)し、それをさらにネットワーク化したもの(図3)が、現在、われわれがニューラルネットワークと呼んでいるものである(厳密には、脳の神経細胞のネットワークもまたニューラルネットワークと称するので、人工的にモデル化したものは、「人工ニューラルネットワーク」と称される)。

図3