富士通は、クラウドなどの製品群「FUJITSU Digital Business Platform MetaArc」を強化する。具体的な強化点は、「既存システムのクラウド移行支援の強化」「デジタル革新の検討・検証プロセスの短縮」の2点。
「デジタル革新が進まないというお客さまが抱える課題を解決するために2点を強化する。クラウドそのものの強化というよりも、富士通の強みである、その上の上流コンサル部分を強化する内容」(執行役員 常務 グローバルマーケティング部門長 阪井洋之氏)
富士通の2015年度クラウドビジネスの売り上げは2900億円で、2016年度に3500億円まで拡大することを目標としている。これを実現するために、「SaaSの市場シェアは18%、プライベートクラウドは19%獲得しているものの、IaaS/PaaSのシェアは9%と低い。2016年度はSaaS以外のクラウドビジネスで、現行のユーザー数の1.5倍獲得することを目標とする」(阪井氏)という。クラウドビジネスの拡大の武器としてMetaArcを活用していく。
デジタル革命は使う人に新しい価値を提供
富士通ではワールドワイドで進展する企業のデジタルトランスフォーメーションを支援するために、4月1日付けでデジタルサービス部門を設立。新たな成長領域であるクラウドやモバイル、ビッグデータ、人工知能(AI)、モノのインターネット(IoT)などデジタルイノベーションビジネス拡大に向け事業を集約した。
富士通 執行役員 専務 デジタルサービス部門長兼CTO 香川進吾氏
富士通 執行役員 常務 グローバルマーケティング部門長 阪井洋之氏
執行役員 専務 デジタルサービス部門長兼最高技術責任者(CTO)である香川進吾氏は「富士通は、デジタル革命がシステムだけでなく、システムを使う人に新たな価値を提供するものだと位置付けている。デジタルサービス部門の組織化は、これを実現するための実施するもので、市場、顧客への対応スピード向上、オープン/クローズ戦略・IP活用などの差異化ソリューションを開発する」と説明した。
人を中心とするヒューマンセントリックなサービスの追求を実現するために「つながる・集める・分析する・価値に変換・最適な制御」のサイクルを構築。このサイクルを支えるプラットフォームがMetaArcと位置付ける。
MetaArcは2015年9月の発表後、半年で1000件の商談実績があり、富士通の社内130システム、ユーザー50システムの合計180システムが稼働している。「2010年から本格導入された仮想化基盤の更改時期を迎えていることから、仮想環境をクラウドに移行するケースが増加している」(阪井氏)
富士通は独自のクラウドサービス「FUJITSU Cloud Service K5」を提供。社内システムをK5に移行することに加え、SE部門、事業部門での利用、SaaSの基盤としての利用など自社利用を進めている。
社内でのクラウド利用効果として、オートスケールやマルチテナントの活用での稼働効率向上などによるリソース削減で仮想マシンの数が2分の1に、共通プラットフォーム化によるインフラ構築簡易化などで導入期間が8分の1、全社システム横串のインフラ監視と自動運用による運用コスト削減で運用工数は3分の2となっている。
社内システムをクラウド移行する際、セキュリティ対策、ネットワーク環境の整備、機能強化と品質確保の体制整備などクラウド移行による苦労、工夫についても「実践で培ったノウハウをリファレンス、支援メニューとして提供」(阪井氏)していく。