デジタル化がつくるモノ、壊すモノ

消費スタイルは今や一人十色--デジタル化対応を急ぐコンサルティングファーム

怒賀新也 (編集部) 2016年04月29日 07時30分

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押し寄せるデジタル化の波

 さまざまな場所で、さまざまな形式を取りながら、急速にビジネスがデジタル化している。トレンドを迎え撃つ側の立場の人や企業は、発想の転換や実行力を迫られているという。

 最近では、FinTechを実現するための中核技術であるブロックチェーン――ハッシュ値を用いた改ざん不能な「分散型取引台帳」――の潜在的な可能性が注目されている。三菱東京UFJ銀行が、ブロックチェーンを使った独自の仮想通貨開発に取り組んでいることも、裾野の広がりという意味で驚きを持って伝えられた。

 コンビニのATMで現金を引き出せば、多くのケースで108円以上の手数料を差し引かれる。現状は、この手数料の存在が事業の柔軟な発想を退け、別の意味では、銀行の収益基盤を守っている。

 ブロックチェーン技術を応用することで、この手数料をゼロに近づけられるため、振込手数料などを気にすることなく、50円といった少額の商品をスマホで手軽に販売するといったことも可能になる。ソフトバンクは、ブロックチェーンを使った国際募金の実証実験を手掛ける。この辺りは、EC企業のポイントプログラムなどともぶつかる可能性はある。

 また、メディアなら、数十年にわたり蓄積した資産である記事を、1本30円といった風に誰もが手軽に買える仕組みを作るといったアイデアも耳にする。自分の誕生日の記事をパッケージし、手軽な価格でスマホにダウンロードできるといった商品なども考えられるかもしれない。

 小売企業では、ユニクロを展開するファーストリテイリングが、リアル店舗とバーチャルの仕組みを統合し、顧客が場所や時間を問わず購買を楽しめるような仕組みを作ろうとしている。ネットでの注文と同時に地球のどこかで、その商品を作り始めるという、生産管理やサプライチェーン管理を巻き込むスケールの大きな話でもある。

 セブン&アイ・ホールディングスは、2015年秋に開始した「omni7」において、ネットから店舗、店舗からネットのどちらの導線で消費者が購買しても収益化する仕組みを目指す。これまで難しいと言われていた、ネット、とりわけスマホアプリを通じた実店舗への来客数増も実現したとのこと。スマホアプリの影響力はまだまだ限定的とする声が聞こえる一方で、長期的な期待は大きい。

米国では大手小売りがオムニチャネルで成功へ

 スマホアプリのダウンロード状況を世界横断で計測するAppAnnieによると、小売りアプリの国別ダウンロード数増加率で、1.3倍の米国が英国や日本を上回った。

 米国の増加をけん引したのはContextLogicのモバイル特化型サービス「Wish」「Geek」の新規ランクイン、デパートのKohl'sなど。日本では、Amazon、App Store、新規ランクインのLOFTなどの影響が大きかったとのこと。

英国ではWish、Geekに加え、App Store、ドラッグチェーンのBootsが強かった
英国ではWish、Geekに加え、App Store、ドラッグチェーンのBootsが強かった(出典:AppAnnie)

 アクティブユーザー数のトップ10(2014年10月~2015年9月集計分)において、米国はWalmart、Walgreens、Target、BestBuy、The Home Depotといった大手小売店がランクインしており、AppAnnieは「オムニチャネルでの成功ぶりを示している」と分析する。

 一方、日本では、全国規模のスーパーマーケットが少ない代わりに、ローソンやセブンイレブンなどの「コンビニエンスストアがモバイルアプリで成功している」。顧客のロイヤリティと利便性を高める電子マネーアプリのランクインが特徴。米国の動向からも、長い目で見れば、小売業においてより大きな規模でオムニチャネルが加速することを予測させるものとなっている。

AppAnnieによる小売アプリのアクティブユーザー数地域別トップ10。Amazonの強さは共通している
小売アプリのアクティブユーザー数地域別トップ10。Amazonの強さは共通している(同)

既存の方法が通用しないデジタル対応

 こうした動きを単純に表現するなら「デジタル化」である。ブロックチェーンでどんな事業を作るのか、小売業がアプリからの来店客をどう増やして売り上につなげていくのか、そのために必要な情報システムを含めた生産体制、物流の仕組みづくり、消費者へのマーケティングをどう実施していくのか。また、APIをどのように組み合わせ、キラーとなるアプリケーションを開発し、そこから収益を上げるのかといったことも考える必要が出てくる。

 事業プランを練り上げるアイデア勝負の面、実行力が鍵を握るという面もある。扱うデータ量、システム間連携の範囲、顧客の消費行動をつかむための手段など、ほとんどの要因は既存のものとは異質になっている。その意味で、企業は既存の経営戦略の立て方が通用しない未体験ゾーンに足を踏み入れようとしている。デジタル化が及ぼす影響を読み切らなければ、今後の成長戦略を描きづらくなっている。

 それを裏付ける動きとして注目が集まっているのが、大手コンサルティングファームのデジタル関連事業への取り組み強化である。

 2013年の12月にデジタル事業を統合した「アクセンチュア・デジタル」を設立したアクセンチュアは、4月5日にデジタルマーケティング事業を展開するアイ・エム・ジェイの株式の過半を取得すると発表した。

 また、IBMはドイツのクリエイティブデジタル企業であるApertoを買収すると2月に発表。コマースやモバイル、ウェアラブルといった基盤向けの戦略立案サービスを手掛けるIBMのデザイン部門「IBM Interactive Experience」(IBM iX)を強化するとしている。

分断していた広告と経営戦略

PwCコンサルティングの松永エリック・匡史氏
PwCコンサルティングの松永エリック・匡史氏

 PwCコンサルティングも、デジタルサービス部門を強化しており、クリエイターなど世界で3000人規模の人員を抱えている。日本で広告分野の立ち上げをリードしたPwCコンサルティングのエンターテイメント&メディア リードパートナー、松永エリック・匡史氏は「ビジネスがリアルを含めてデジタル化している。デジタルトランスフォーメーションをどう進めていくかは企業戦略の問題」と話す。

 特に重要度が高まるのがマーケティング部門。従来、多くの企業でマーケティングの中心となっていたのは広告代理店だったが「マーケティングの考え方が変わってきた」(松永氏)という。

 広告と経営戦略がこれまでは分断していたが、デジタル化の波を受け、統合的に実施する必要が出てきている。「テレビCMでプロモーションする商品について、本当にその商品でいいのかという話まで含めて議論する」(松永氏)という。

 広告主と話をする際の相手も、広告代理店の場合は主にマーケティング部門であるのに対し、コンサルティング企業は主に経営層だという。その意味で、経営層を巻き込んだ上で、経営戦略としてのマーケティングを支援しながら、広告、マーケティングの実行に至るまで、コンサルティングファームが一貫して責任を持つような事業イメージになる。

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