とは言うもののVMwareにとって、仮想化分野という枠を越え、定評あるクラウドプロバイダーとして認知されるようになるまでに、やるべきことはまだまだある。
新製品の提供によって勢いを付けているとはいえ、埋めるべきギャップはまだ存在しており、それはパブリッククラウド環境やハイブリッドクラウド環境に対するプロビジョニングで顕著だとGelsinger氏は述べた。
同氏は「当社の戦略や成果に私は満足しているが、Virtustreamや『vCloud Air』関連(の軌道修正)に代表されるような、昨年に起こったいくつかの出来事は筋書き通りとはとても言えず、われわれの足を引っ張ることになった。その結果、これらの分野の一部では、躍進に向けてさらなる努力が必要になっている(そして)われわれは勢いを付けてきている」と述べ、ハイブリッドクラウド関連のソフトウェアやサービスの開発やマーケティングを共同で行うという、最近発表したIBMとの提携に言及した。
EMCは2015年5月にVirtustreamを買収した後、クラウドサービス事業を展開する新会社をVMwareと共同で設立すると同年10月に発表していた。これにより、新会社のクラウドポートフォリオをVMwareのプラットフォームで強化するとともに、財務面でも統合しようと計画していたのだった。しかし、Virtustreamの世界規模の事業展開計画に起因する損失計上の可能性が市場の嫌気を誘い、VMwareの株価はこの発表後に急落した。
それから2カ月後の12月、VMwareはこの新会社設立計画から撤退する意向を明らかにし、EMCが単独でVirtustream製品の開発を担うことになった。そしてEMCは、2016年5月2日から開催した「EMC World 2016」で「Virtustream Storage Cloud」を発表している。
この一件を残念な出来事だったと語るGelsinger氏は、計画の完遂に向けてそれまでに相当な努力が傾けられていたものの、「厄介な問題」が発生したのだと述べた。VMwareとEMCだけでなく、DellとSilver Lake Partnersが関与するようになり、関係株主が増えた結果、承認を得る必要のある相手が増え、同計画にまつわる「複雑さ」がどうしようもないほどに膨れあがったのだとGelsinger氏は説明した。
同氏は「イライラさせられる経験であり、われわれは多くの時間を無駄にした。ああなると分かっていたら、こういった道には踏み出さなかった」と述べたが、DellとEMCほどの大型合併は滅多にあることではないため、あらゆる面から影響を予測するのは難しいとも述べた。