DellによるEMCの買収後、VMwareはどうなっていくのかをより明確にしてほしいという声が上がるなか、VMwareの最高経営責任者(CEO)Pat Gelsinger氏は同社の運営は独立したものであり、既存のハードウェア企業とのパートナー関係に変わりはないと述べるとともに、スピンオフの可能性を否定した。
VMwareは、DellによるEMCの買収が完了した後も、傘下企業として独立した事業運営を続けていくという。
Gelsinger氏によると、VMwareの事業運営はほとんど変わらず、DellとEMCが組織再編や、両社を統合する取り組みを実施してもその影響はないだろうという。なお、EMCはVMwareの株式の約80%を保有している。
インドネシアのバリで現地時間5月16〜18日に開催されたIDC ASEANのイベント「CIO Leadership Forum 2016」で講演したGelsinger氏は、今回の買収が持つ意味について、同社の主要株主がEMCからDellへと変わることは、「EとD」を交換するというものでしかないと述べた。同氏は「(それ以外は)何も変わっていない。Dellは(VMwareの)独立とエコシステム、(売り上げの)増加にコミットしている」と述べ、Hewlett Packard Enterprise(HPE)を含むハードウェアパートナーとの既存の関係にも変化はないと付け加えた。
同氏は、買収発表の直後にHPEのCEOであるMeg Whitman氏に電話をかけ、両社の関係に揺るぎはないと確約したことを明らかにした。
しかしGelsinger氏の確約にもかかわらず、Whitman氏は電子メールで自社の従業員に対して、DellによるEMCの買収計画を否定的な論調で伝えた。VMwareとハードウェアベンダー(HPEやIBM、Cisco Systemsなど)の関係に及ぼされる影響についての疑問が湧き上がってくるのは必然であり、各ベンダーらはサーバ市場でDellと激しい戦いを繰り広げているため、DellがVMwareの親会社になれば提携に終止符を打つ可能性もある。
しかし、IDCのアジアパシフィックプラクティスグループのグループバイスプレジデントであるSandra Ng氏は、この市場において、互いのプラットフォームから手を引くという判断は、どの企業にとってもデメリットにしかならないだろうと述べた。Ng氏は同イベント会場での米ZDNetとのインタビューで「今日の市場はあまりにも複雑化しているため、単一のベンダーに依存しているような顧客はほとんど存在していない」と述べた。
Ng氏は「(法人顧客から)われわれの元に寄せられてくる疑問の多くは、ベンダーソーシングやベンダーマネジメントに関するものだ(中略)市場はオープンなイノベーションとマルチベンダーソーシングの必要性について強く実感している」と述べ、Dellだけではなくその他のハードウェアベンダーもこのエコシステムをサポートしたいと望むだろうと付け加えた。
Ng氏は、顧客らの懸念として、サポートの継続に関するものや、買収に伴う混乱の可能性に関するものがあったと述べたが、そういった懸念は珍しい話ではなく、どのような買収発表の後にも起こり得ると付け加えた。
Gelsinger氏は米ZDNetに対して、HPEとDellは真正面からぶつかり合っており、両社の製品ラインアップのほとんどすべてで競合している点を認めた。同氏は、その状況がEMCの買収完了後も続いていくだろうと述べた。