ソフトウェアの運用をモデル化するJuju
そしてそのモデル化に対するCanonicalの回答が「Juju」であると説明。JujuはCanonicalが主に開発するオープンソースのオーケストレーションツール。Ubuntuの上でさまざまなソフトウェアを開発や変更、起動、停止などの機能を簡易化する。
これを使えば導入が困難と言われるOpenStackやHadoop、Sparkなども容易に導入が可能になり、コマンドラインやGUIを使うことでコンポーネントをスケールアップさせたり、スケールアウトさせたりすることが可能だ。オンプレミスのサーバにもAWSなどのパブリッククラウドにも対応しているので自社のリソースだけではなくクラウド上のリソースも管理できる。
その際に強調したのは、個々の企業がサーバの設定作業などの自動化機能を持つ、ChefやPuppet、Ansibleのスクリプトを個別に書かずとも、そのコードを共有すれば、各々の企業に発生する運用のための人的コストを削減できるという発想だ。
そこで単にオーケストレーションをするだけでは話は終わらない。導入のためのコードを流通させることで既に実績のあるコードが再利用でき、しかもそれをスマートフォンのアプリストアのようなインターフェースで使用することを可能にしたのがCharmと呼ばれるコードであり、Charmstoreと呼ばれるCharmのためのストアシステムだ。
ムービーではなくデモをするShuttleworth氏の真剣さ
Shuttleworth氏は実際にWordPressとMariaDBをJujuを使ってインストールするデモを行った。WordPressそのもの、オープンソースRDBMSであるMariaDBそのもののインストールは他のツールでも簡単にできるが、複数のコンポーネントの関係性を記述できることとそのコードを流通させることが可能であるという部分がChefやPuppetなどとは違うと説明した。
また、より複雑な構成としてApache Hadoop~Spark~Zeppelinという構成のソフトウェア群をGUIを使って構成するデモを実施した。会場に「Orange Box」と呼ばれる複数のサーバを収納したオレンジ色のサーバクラスタを持ち込んで実際にソフトウェアをデプロイしたり、ベアメタルのマシンを起ち上げたりする部分はShuttleworth氏のデモの定番である。Charmは「実行可能なホワイトペーパー」ともいえるものだが、ムービーを単に再生するのではなく実際にデモを行う辺りが真剣にプレゼンテーションに向かうShuttleworth氏の意気込みを感じた一面であった。
その後、単なるサーバの上のソフトウェアだけではなくIoTの時代に向けてUbuntu がさまざまなデバイスでも活用していることを紹介。自動車からドローンまで多くのデバイスで稼働するUnbuntuを紹介。テレコム業界でもさまざまな通信機器のオーケストレーションがJujuとCharmで行っていることなどを述べて全体のスピーチを締めくくった。
コストを抑えるためには運用に注目してツールやエコシステムを作り、それを拡げようとするCanonicalの狙いは十分に伝わった基調講演であった。