Red Hatは米国時間6月28日、サンフランシスコで開催した「Red Hat Summit 2016」のセッションにおいて、14年の歴史を持つ「Red Hat Enterprise Linux」(RHEL)のオーバーホール戦略を明らかにした。
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同社の製品ディレクターGunnar Hellekson氏は、「Moving Red Hat Enterprise Linux into a New World」(Red Hat Enterprise Linuxを新たな世界に)と題されたセッションにおいて、絶えず変化し続けている世界のなかで、RHELが新たな、そして多様な要求に応えるかたちで進化していく必要性について語るとともに、RHELが現在直面している問題とそのソリューションを概説した。
Hellekson氏は「2002年(RHELが最初にリリースされた年)に比べると世界は大きく異なっている」と述べるとともに、「RHELは今では人々に力を貸すよりも、真価を発揮できずにいるケースの方が増えてきている。われわれがここに集まっているのは、RHELの力を発揮できるようにするうえでの今後の展開について話すためだ」と述べた。
RHELが抱えている課題
リリースのペースはハードウェアベンダーにとって頭痛の種となっている。リリースのペースが遅いため、顧客は次のマイナーリリースまでに今ほど待たずに、ハードウェアの力を有効に利用できるようになってほしいと考えている。また、顧客はどれが認定ハードウェアであるのかや、いつ認定されるのかを常に把握しているわけではない(認定ハードウェアは米国防総省(DoD)関連の仕事では必須要件だ)。ハードウェア市場は急速に変化し、動いているものの、すべての企業がサイクルに完全に追随するわけではない。Hellekson氏は「これはわれわれに返ってくる話だが、クラウドの顧客はこういったことを気にかけたいとはまったく思っていないのだ」と述べた。
一方、ソフトウェアベンダーにとっての頭痛の種は、ソフトウェアの依存関係のどれが、いつ変更されるのかが明らかではないという点だ。アプリケーションの依存関係を満足させるうえで、今まで以上に多くのパッケージが要求されるようになっている。また、独立系のソフトウェアベンダー(ISV)は、アプリの動作環境を特定バージョンのみとしておけるよう、マイナーリリースを好んでおり、これによってもアップデートのペースが遅くなっている。このためRed Hatは、バージョン間での安定性を実現することでISVに対して便宜を図る道を模索している。なお、顧客もアップグレードによって何かがおかしくなるのではないかという懸念から、マイナーリリースを好む傾向がある。
サブスクリプションの管理という難題もある。OSとアプリを同時にアップデートするよう要求することで、作業量とリスクの増大がもたらされる。大規模なシステムでのセキュリティやメンテナンスに関連する作業は悪夢のようなものとなり、作業間の関連もしばしば分かりにくくなっている。多くの顧客は何かが必要になった場合に備えてRHELのフルインストールを行い、その後で不必要なものを1つずつ取り除いていくという、エンタープライズIT版のジェンガとも言うべきゲームを行っている状況だ。